■元素の周期表・多面体の周期表(その1)

【1】元素の周期表

 1869年,ロシアの化学者ドミトリ・メンデレーエフによって,元素の周期表が提案された.

 それまでにも元素を並べた表はいくつかあったが,メンデレーエフ元素の化学的性質や物理的性質を考慮して,似ている元素が同じ縦の列に並ぶように表をまとめたのである.この縦の列を「族」と呼ぶ.アルカリ金属,アルカリ土類金属,遷移金属,ハロゲン,貴ガスなどなど.

 また,その表には周期性があり,横の列は「周期」と呼ばれる.現在,周期表は原子番号順に元素が並べられているが,当時,表には空欄があり,メンデレーエフは空欄に入る未発見の元素の存在と性質を予言した.実際,予言どおりの元素が発見され,メンデレーエフの考えが正しいことが証明されたのである.

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【2】単純群の周期表

 たとえば,リーの連続変換の群の研究は,キリングによって単純な有限連続群をすべて見つけ,系列に分類するという単純群の「元素周期律表」に結びついていく.

  A1   A2   A3   A4   A5   A6   A7   A8

  B1   B2   B3   B4   B5   B6   B7   B8

      C2   C3   C4   C5   C6   C7   C8

              D4   D5   D6   D7   D8

      G2       F4       E6   E7   E8

 キリングはリー群を7系列に分け,AからGの文字を割り当てた.A系列が最も単純で,B・C・D系列はより複雑だが互いに似ている.これらを古典型とよぶ.添字はそのリー群の表す空間の次元である.E・F・G系列の例外型リー群は8次元で終了し,全部で5つの例外型リー群がある.

 もう一つの問題は,キリングが分類した単純群をすべて構成することである.カルタンはそれが実際に存在することを示し,その結果は現在「キリング・カルタン分類」として知られている.

 A・B・C・D系列はユークリッド空間の中の対称群として扱うことができる.ディクソンは,A1,A2,A3などの個々に対して,素数位数の群を構成した.例外系列を構成するにはディクソンから半世紀待たなくてはならなかったが,1955年,シュバレーが例外系列に対する一般的構成法を完成させた.

 そして,他の数学者たちがその下流を整理し始めた.たとえば,日本人数学者・鈴木通夫がまったく新しい単純群(鈴木系列)を発見した.素数位数の巡回群を除いて,それまで知られた有限単純群の位数はすべて偶数であって,さらに3の倍数と予想されていた.ところがこの予想は外れであって,B2から生成される鈴木群は位数が3の倍数でない唯一の例外であることがわかっている.また,韓国人数学者・リー(Ree)がシュバレー系列,鈴木系列を含む単純群を発見した.

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【3】多面体の周期表

 シュバレー,鈴木,リーが使用した方法は代数的なものであったが,幾何学的なアプローチを考える人達がいた.ティッツは内在する幾何を利用して有限リー群を構成しようとした.

 3次元には正四面体群A3,正八面体群B3,正二十面体群H3の3種類の結晶がある.4次元正多面体にはA4,B4に加え,正24胞体F4,正600胞群H4がある.一般に,高次元空間における単結晶は

  3  4  5  6  7  8  8次元以上

  A3  A4  A5  A6  A7  A8  AnかBnのみ

  B3  B4  B5  B6  B7  B8  AnかBnのみ

           E6  E7  E8

     F4

  H3  H4

であるが,幾何学的に3次元の多重結晶を育てることによって4次元以上の多重結晶(単純群)をすべて作り出せるのである.

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