■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その83,杉岡幹生)

 今回は、下記のζ(2)の分岐構造のうち『10分割の分身たちは、20分割の分身たちに分かれる。』を確かめます。

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 ζ(2)は、2分割の分身たちに分かれる。

 2分割の分身たちは、4分割の分身たちに分かれる。

 4分割の分身たちは、8分割の分身たちに分かれる。

 8分割の分身たちは、16分割の分身たちに分かれる。・・・・・・

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 あるいは、次のようにもなっている。

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 ζ(2)は、3分割の分身たちに分かれる。

 3分割の分身たちは、6分割の分身たちに分かれる。

 6分割の分身たちは、12分割の分身たちに分かれる。・・・・・・

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 あるいは、次のようにもなっている。

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 ζ(2)は、5分割の分身たちに分かれる。

 5分割の分身たちは、10分割の分身たちに分かれる。

 10分割の分身たちは、20分割の分身たちに分かれる。・・・・・

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 あるいは・・と、素数を起点として無限に倍々ゲームで分岐していく。逆に無限の彼方から見れば・・⇒32分身⇒16分身⇒8分身⇒4分身⇒2分身⇒ζ(2) などとなっている。

 厳密には予想ですが、こんなふうになっています。

(注記)例えば「3分割の分身たちは、6分割の分身たちに分かれる。」は、精密にいうと「ζ(2)3分割の分身たちは、ζ(2)6分割の分身たちに分かれる。」ということです。略して書いているので、ご注意ください。

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 それでは、ζ(2)10分割分身たちの分岐構造を見ることにします。準備としてZ(2)(つまりζ(2))の10分割を(その63)付録から抜粋しました。20分割は、下記で初めて示しました。分身たちの壮大な秩序を味わってください。

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 < Z(2)10分割は(その63)から抜粋 >

  Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・=(3/4)ζ(2)=π^2/8

   Z(2)は本質的にζ(2)に等しいものです。

■Z(2)10分割

 B1 = 1 +1/39^2 +1/41^2 +1/79^2 +1/81^2 +1/119^2 + ・・  =(π/40)^2/{cos(19π/40)}^2

 B2 =1/3^2 +1/37^2 +1/43^2 +1/77^2 +1/83^2 +1/117^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(17π/40)}^2

 B3 =1/5^2 +1/35^2 +1/45^2 +1/75^2 +1/85^2 +1/115^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(15π/40)}^2

 B4 =1/7^2 +1/33^2 +1/47^2 +1/73^2 +1/87^2 +1/113^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(13π/40)}^2

 B5 =1/9^2 +1/31^2 +1/49^2 +1/71^2 +1/89^2 +1/111^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(11π/40)}^2

 B6 =1/11^2 +1/29^2 +1/51^2 +1/69^2 +1/91^2 +1/109^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(9π/40)}^2

 B7 =1/13^2 +1/27^2 +1/53^2 +1/67^2 +1/93^2 +1/107^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(7π/40)}^2

 B8 =1/15^2 +1/25^2 +1/55^2 +1/65^2 +1/95^2 +1/105^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(5π/40)}^2

 B9 =1/17^2 +1/23^2 +1/57^2 +1/63^2 +1/97^2 +1/103^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(3π/40)}^2

 B10=1/19^2 +1/21^2 +1/59^2 +1/61^2 +1/99^2 +1/101^2 + ・・ =(π/40)^2/{cos(π/40)}^2

    B1 +B2 +B3 +B4 +B5 +B6 +B7 +B8 +B9 +B10=Z(2)=π^2/8となる。

■Z(2)20分割

 C1 = 1 +1/79^2 +1/81^2 +1/159^2 +1/161^2 +1/239^2 + ・・・・ =(π/80)^2/{cos(39π/80)}^2

 C2 = 1/3^2 +1/77^2 +1/83^2 +1/157^2 +1/163^2 +1/237^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(37π/80)}^2

 C3 = 1/5^2 +1/75^2 +1/85^2 +1/155^2 +1/165^2 +1/235^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(35π/80)}^2

 C4 = 1/7^2 +1/73^2 +1/87^2 +1/153^2 +1/167^2 +1/233^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(33π/80)}^2

 C5 = 1/9^2 +1/71^2 +1/89^2 +1/151^2 +1/169^2 +1/231^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(31π/80)}^2

 C6 = 1/11^2 +1/69^2 +1/91^2 +1/149^2 +1/171^2 +1/229^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(29π/80)}^2

 C7 = 1/13^2 +1/67^2 +1/93^2 +1/147^2 +1/173^2 +1/227^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(27π/80)}^2

 C8 = 1/15^2 +1/65^2 +1/95^2 +1/145^2 +1/175^2 +1/225^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(25π/80)}^2

 C9 = 1/17^2 +1/63^2 +1/97^2 +1/143^2 +1/177^2 +1/223^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(23π/80)}^2

 C10= 1/19^2 +1/61^2 +1/99^2 +1/141^2 +1/179^2 +1/221^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(21π/80)}^2

 C11=1/21^2 +1/59^2 +1/101^2 +1/139^2 +1/181^2 +1/219^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(19π/80)}^2

 C12=1/23^2 +1/57^2 +1/103^2 +1/137^2 +1/183^2 +1/217^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(17π/80)}^2

 C13=1/25^2 +1/55^2 +1/105^2 +1/135^2 +1/185^2 +1/215^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(15π/80)}^2

 C14=1/27^2 +1/53^2 +1/107^2 +1/133^2 +1/187^2 +1/213^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(13π/80)}^2

 C15=1/29^2 +1/51^2 +1/109^2 +1/131^2 +1/189^2 +1/211^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(11π/80)}^2

 C16=1/31^2 +1/49^2 +1/111^2 +1/129^2 +1/191^2 +1/209^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(9π/80)}^2

 C17=1/33^2 +1/47^2 +1/113^2 +1/127^2 +1/193^2 +1/207^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(7π/80)}^2

 C18=1/35^2 +1/45^2 +1/115^2 +1/125^2 +1/195^2 +1/205^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(5π/80)}^2

 C19=1/37^2 +1/43^2 +1/117^2 +1/123^2 +1/197^2 +1/203^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(3π/80)}^2

 C20=1/39^2 +1/41^2 +1/119^2 +1/121^2 +1/199^2 +1/201^2 + ・・  =(π/80)^2/{cos(π/80)}^2

  C1 +C2 +C3 +C4 +C5 +C6 +C7 +C8 +C9 +C10 +C11 +C12 +C13 +C14 +C15 +C16 +C17 +C18 +C19 +C20=Z(2)=π^2/8となる。

念のためExcelマクロでも上記全式C1〜C20の級数が右辺値に収束することを確認しました。この20分割の導出方法は以下の通りです。

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 20分割の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を微分した式@を利用します。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 上を1回微分すると次式が得られます。

 1/(1^2-x^2)^2 +1/(3^2-x^2)^2 +1/(5^2-x^2)^2 +・・=(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2 + Others(x) -----@

 ここで右辺のOthers(x)は、Others(x)=-{π/(8x^3)}tan(πx/2)ですが、無視してよい個所なのでOthers(x)としました。

 この式のxに特定の値を代入することで、次のようにZ(2)の分割級数(分身たち)が求まります。

 @のxに値39/40を代入すると、C1が得られる。

 @のxに値37/40を代入すると、C2が得られる。

 @のxに値35/40を代入すると、C3が得られる。

 @のxに値33/40を代入すると、C4が得られる。

 @のxに値31/40を代入すると、C5が得られる。

 @のxに値29/40を代入すると、C6が得られる。

 @のxに値27/40を代入すると、C7が得られる。

 @のxに値25/40を代入すると、C8が得られる。

 @のxに値23/40を代入すると、C9が得られる。

 @のxに値21/40を代入すると、C10が得られる。

 @のxに値19/40を代入すると、C11が得られる。

 @のxに値17/40を代入すると、C12が得られる。

 @のxに値15/40を代入すると、C13が得られる。

 @のxに値13/40を代入すると、C14が得られる。

 @のxに値11/40を代入すると、C15が得られる。

 @のxに値 9/40を代入すると、C16が得られる。

 @のxに値 7/40を代入すると、C17が得られる。

 @のxに値 5/40を代入すると、C18が得られる。

 @のxに値 3/40を代入すると、C19が得られる。

 @のxに値 1/40を代入すると、C20が得られる。

注記:左辺はZ(2)分割級数だけを拾い、右辺はそれに対応する(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2の値だけを拾います(すなわち、左辺ではZ(2)分割級数以外の級数を無視し、右辺ではOthers(x)の値は無視する。それでOK)。

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 上記の10分割と20分割の結果から「10分割の分身たちは、20分割の分身たちに分かれる」ことが言えるのですが、見てみましょう。 

 どうなっているかというと、次のようになっているのです。

  B1=C1 +C20   ----@

  B2=C2 +C19   ----A

  B3=C3 +C18   ----B

  B4=C4 +C17   ----C

  B5=C5 +C16   ----D

  B6=C6 +C15   ----E

  B7=C7 +C14   ----F

  B8=C8 +C13   ----G

  B9=C9 +C12   ----H

  B10=C10 +C11  ----I

 まさに”分身が二つに分かれている”ことがわかります! 級数での成立は簡単にわかります(眺めればわかる)。

 右辺値での成立も(級数の成立から自明ではありますが)、次のようにすれば容易に確かめられる。

三角関数において次式が成り立つ。

 1/{cos(π/2 -2x)}^2 =(1/4)[1/{cos(π/2 -x)}^2 +1/{cos(x)}^2]

 このxにπ/80、3π/80、5π/80、7π/80、9π/80、11π/80、13π/80、15π/80、17π/80、19π/80を代入することで、それぞれ@〜Iの右辺値での成立を確かめることができます。

 以上より『10分割の分身たちは、20分割の分身たちに分かれる。』が確認できました。

 これまでに確認できたケースをまとめておきます。

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 ζ(2)は、2分割の分身たちに分かれる。

 2分割の分身たちは、4分割の分身たちに分かれる。

 4分割の分身たちは、8分割の分身たちに分かれる。

 8分割の分身たちは、16分割の分身たちに分かれる。

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 ζ(2)は、3分割の分身たちに分かれる。

 3分割の分身たちは、6分割の分身たちに分かれる。

 6分割の分身たちは、12分割の分身たちに分かれる。

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 ζ(2)は、5分割の分身たちに分かれる。

 5分割の分身たちは、10分割の分身たちに分かれる。

 10分割の分身たちは、20分割の分身たちに分かれる。

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以上。(杉岡幹生)

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