■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その73,杉岡幹生)

 今回から、虚2次体Q(√-5)ゼータLC(s)のLC(1)の分割を行ないます。今回はその4分割を示します。

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LC(s)の分割は4分割スタートとなるため、4×nで”4n分割可能”となります。つまり4分割、8分割、12分割・・ができることになります。

 LC(s)はディリクレのL関数L(χ,s)

  L(χ,s)=χ(1)/1^s +χ(2)/2^s +χ(3)/3^s +χ(4)/4^s +χ(5)/5^s +χ(6)/6^s +χ(7)/7^s +・・

 の一種であり、次のものです。

  LC(s)=1 +1/3^s +1/7^s +1/9^s -/11^s -1/13^s -1/17^s -1/19^s +・・

 LC(s)は虚2次体Q(√-5)のゼータ関数で、導手N=20を持つ。

 ディリクレ指標χ(n)は、n≡1 or 3 or 7 or 9 mod 20のときχ(n)=1, n≡11 or 13 or 17 or 19 mod 20のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。

LC(1)は次の通りです。

 LC(1)=1 +1/3 +1/7 +1/9 -/11 -1/13 -1/17 -1/19 +1/21 +1/23 +1/27 +1/29 -/31 -1/33 -1/37 -1/39 +・・・=π/√5 ------@

 右辺値π/√5は、虚2次体の類数公式から出ます。なお、”LC()”という記号は私が独自に用いているものであり、一般的なものではないので注意してください。

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 それではLC(1)の4分割を示します。※を無視した残りの4つで4分割となります。次のようにL(1)5分割を利用しているため、あえて※を残しました。

■LC(1)4分割

 B1= 1 -1/19 +1/21 -1/39 +1/41 -1/59 +・・ =(π/20)tan(9π/20)

 B2=1/3 -1/17 +1/23 -1/37 +1/43 -1/57 +・・=(π/20)tan(7π/20)

※B3=1/5 -1/15 +1/25 -1/35 +1/45 -1/55 +・・=(π/20)tan(5π/20) ⇒無視

 B4=1/7 -1/13 +1/27 -1/33 +1/47 -1/53 +・・ =(π/20)tan(3π/20)

 B5=1/9 -1/11 +1/29 -1/31 +1/49 -1/51 +・・ =(π/20)tan(π/20)

  B1 +B2 +B4 +B5=LC(1) となります。上記全式に対しExcelで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

  なお、B3を除くB1,B2,B4,B5の右辺のtan()の値は、次の通り。

 tan(9π/20)=√5 +1 +√(5+2√5)

 tan(7π/20)=√5 -1 +√(5-2√5)

 tan(3π/20)=√5 -1 -√(5-2√5)

 tan(π/20) =√5 +1 -√(5+2√5)

  上記B1〜B5はL(1)5分割の分身たちであり、B1 -B2 +B3 -B4 +B5=L(1)となります。L(1)5分割は既に(その28)で示しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

 xに9/10を代入すると、B1が得られる。

 xに7/10を代入すると、B2が得られる。

 xに5/10を代入すると、B3が得られる。 ⇒ 無視。5/10=1/2代入であり、L(1)1分割と一致

 xに3/10を代入すると、B4が得られる。

 xに1/10を代入すると、B5が得られる。

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 このようにしてLC(1)の4分割が求まりました。上で言及したようにLC(1)の分身たちは、L(1)5分割の分身たちの内の4つと同じです。

 

 LC(1)は、L(1)のパーツB1〜B5のうちB1,B2,B4,B5から作られている。まとめて書くと、次のようになります。

  L(1)= B1 -B2 +B3 -B4 +B5

  LC(1)=B1 +B2 +B4 +B5

 このようにLC(1)の分身たちは、L(1)の分身たち(の一部)から成っていることがわかります。

 さらに、@よりLC(1)=π/√5 ですから、LC(1)の分身たちの特殊値のtan()に着目すると、次式が成り立ちます。

  (π/20){tan(9π/20) +tan(7π/20) +tan(3π/20) +tan(π/20)}=π/√5

 単発的なLC(1)=π/√5 の裏側にこのような構造が潜んでいます。

 これまでの結果を更新しておきます。

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 ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LE(s) 虚2次体Q(√-6)ゼータ、導手N=24   ⇒ 4/8/12分割可能である。4n分割可能と考えられる(予想)。4n分割が最良か(問題)。

  LC(s) 虚2次体Q(√-5)ゼータ、導手N=20   ⇒ 4分割可能である。

注記:nは1以上の整数  以上。(杉岡幹生)

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