■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その68,杉岡幹生)

 LE(s)の4分割、8分割を見ましたので、今回はその12分割を調べます。

LE(s)はディリクレのL関数L(χ,s)

  L(χ,s)=χ(1)/1^s +χ(2)/2^s +χ(3)/3^s +χ(4)/4^s +χ(5)/5^s +χ(6)/6^s +χ(7)/7^s +・・

の一種であり、次のものです。

  LE(s)=1 +1/5^s +1/7^s +1/11^s -/13^s -1/17^s -1/19^s -1/23^s +・・

 LE(s)は虚2次体Q(√-6)のゼータ関数で、導手N=24を持つ。

 ディリクレ指標χ(n)は、n≡1 or 5 or 7 or 11 mod 24のときχ(n)=1, n≡13 or 17 or 19 or 23 mod 24のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。

 s=1のLE(1)は次となる。右辺値は虚2次体の類数公式からわかります。

 LE(1)=1 +1/5 +1/7 +1/11 -/13 -1/17 -1/19 -1/23 +1/25 +1/29 +1/31 +1/35 -/37 -1/41 -1/43 -1/47 +・・・=π/√6 ------@

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 それでは、LE(1)の12分割を示します。※は無視して残りの12個で12分割となります。L(1)18分割を利用しているため、あえて※を残しました。

■LE(1)12分割

 A1= 1 -1/71 +1/73 -1/143 +1/145 -1/215 + ・・ =(π/72)tan(35π/72)

※A2= 1/3 -1/69 +1/75 -1/141 +1/147 -1/213 + ・・ =(π/72)tan(33π/72) ⇒無視

 A3= 1/5 -1/67 +1/77 -1/139 +1/149 -1/211 + ・・ =(π/72)tan(31π/72)

 A4= 1/7 -1/65 +1/79 -1/137 +1/151 -1/209 + ・・ =(π/72)tan(29π/72)

※A5= 1/9 -1/63 +1/81 -1/135 +1/153 -1/207 + ・・ =(π/72)tan(27π/72) ⇒無視

 A6=1/11 -1/61 +1/83 -1/133 +1/155 -1/205 + ・・ =(π/72)tan(25π/72)

 A7=1/13 -1/59 +1/85 -1/131 +1/157 -1/203 + ・・ =(π/72)tan(23π/72)

※A8=1/15 -1/57 +1/87 -1/129 +1/159 -1/201 + ・・ =(π/72)tan(21π/72) ⇒無視

 A9=1/17 -1/55 +1/89 -1/127 +1/161 -1/199 + ・・ =(π/72)tan(19π/72)

 A10=1/19 -1/53 +1/91 -1/125 +1/163 -1/197 + ・・ =(π/72)tan(17π/72)

※A11=1/21 -1/51 +1/93 -1/123 +1/165 -1/195 + ・・ =(π/72)tan(15π/72) ⇒無視

 A12=1/23 -1/49 +1/95 -1/121 +1/167 -1/193 + ・・ =(π/72)tan(13π/72)

 A13=1/25 -1/47 +1/97 -1/119 +1/169 -1/191 + ・・ =(π/72)tan(11π/72)

※A14=1/27 -1/45 +1/99 -1/117 +1/171 -1/189 + ・・ =(π/72)tan(9π/72) ⇒無視

 A15=1/29 -1/43 +1/101 -1/115 +1/173 -1/187 + ・・=(π/72)tan(7π/72)

 A16=1/31 -1/41 +1/103 -1/113 +1/175 -1/185 + ・・=(π/72)tan(5π/72)

※A17=1/33 -1/39 +1/105 -1/111 +1/177 -1/183 + ・・=(π/72)tan(3π/72) ⇒無視

 A18=1/35 -1/37 +1/107 -1/109 +1/179 -1/181 + ・・=(π/72)tan(π/72)

  A1 +A3 +A4 +A6 -A7 -A9 -A10 -A12 +A13 +A15 +A16 +A18=LE(1)=π/√6となります。上記全式に対し数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

 上記A1〜A12はL(1)18分割の分身たちです。L(1)18分割はまだ示していませんでしたが、上記の通りです。美しい秩序から成り立っています。

 A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9 -A10 +A11 -A12 +A13 -A14 +A15 -A16 +A17 -A18=L(1)=π/4となります。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。次のタンジェントの部分分数展開式を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2)

 このxに次の値を代入することで、分割された級数とその値が求まります。

 xに値35/36を代入すると、A1が得られる。

 xに値33/36を代入すると、A2が得られる。⇒無視 33/36=11/12でありL(1)6分割のA1と同じ

 xに値31/36を代入すると、A3が得られる。

 xに値29/36を代入すると、A4が得られる。

 xに値27/36を代入すると、A5が得られる。⇒無視 27/36=9/12(=3/4)でありL(1)6分割のA2と同じ

 xに値25/36を代入すると、A6が得られる。

 xに値23/36を代入すると、A7が得られる。

 xに値21/36を代入すると、A8が得られる。 ⇒無視 21/36=7/12でありL(1)6分割のA3と同じ

 xに値19/36を代入すると、A9が得られる。

 xに値17/36を代入すると、A10が得られる。

 xに値15/36を代入すると、A11が得られる。 ⇒無視 15/36=5/12でありL(1)6分割のA4と同じ

 xに値13/36を代入すると、A12が得られる。

 xに値11/36を代入すると、A13が得られる。

 xに値 9/36を代入すると、A14が得られる。 ⇒無視 9/36=3/12(=1/4)でありL(1)6分割のA5と同じ

 xに値 7/36を代入すると、A15が得られる。

 xに値 5/36を代入すると、A16が得られる。

 xに値 3/36を代入すると、A17が得られる。 ⇒無視 3/36=1/12でありL(1)6分割のA6と同じ

 xに値 1/36を代入すると、A18が得られる。

 なお、右に記したL(1)6分割は(その21)で示したのでそれを参照ください。http://www.geocities.jp/ikuro_kotaro/koramu2/12189_n8.htm

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 このようにしてLE(1)の12分割が求まりました。上で言及したようにLE(1)の分身たちは、L(1)18分割の分身たちの内の12個と同じです。

 

 つまりLE(1)は、L(1)のパーツA1〜A18のうちのA1,A3,A4,A6,A7,A9,A10,A12,A13,A15,A16,A18から作られている。まとめて書くと、次のようになります。

  L(1)=A1 -A2 +A3 -A4 +A5 -A6 +A7 -A8 +A9 -A10 +A11 -A12 +A13 -A14 +A15 -A16 +A17 -A18

  LE(1)=A1 +A3 +A4 +A6 -A7 -A9 -A10 -A12 +A13 +A15 +A16 +A18

 単発的に見えるLE(1)=π/√6 の裏側はこのような構造になっています。面白いことです。

 これでLE(1)は終了とします。4n分割可能であることはわかりましたが(厳密には予想)、LE(1)ははたして4n分割が最良なのでしょうか。

 これまでの結果を更新しておきます。

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 ζ(s) リーマンゼータ、導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LE(s) 虚2次体Q(√-6)ゼータ、導手N=24   ⇒ 4/8/12分割可能である。4n分割可能と考えられる(予想)。4n分割が最良か(問題)。

注記:nは1以上の整数  以上。(杉岡幹生)

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