■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その61,杉岡幹生)

 今回は、L1(2)の8分割を示します。

 L1(s)は実2次体Q(√2)のゼータ関数で、導手N=8を持つ。

 ディリクレ指標χ(n)は次の通り。n≡1 or 7 mod 8のときχ(n)=1, n≡3 or 5 mod 8のときχ(n)=-1, その他のときχ(n)=0となる。s=2のL1(2)は次となります。

 L1(2)=1 -1/3^2 -1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 -1/11^2 -/13^2 +1/15^2 +1/17^2 -1/19^2 -1/21^2 +1/23^2 +・・=(√2/16)π^2

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 それでは、L1(2)の8分割を示します。

■L1(2)8分割

 A1 = 1 +1/31^2 +1/33^2 +1/63^2 +1/65^2 +1/95^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(15π/32)}^2

 A2=1/3^2 +1/29^2 +1/35^2 +1/61^2 +1/67^2 +1/93^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(13π/32)}^2

 A3=1/5^2 +1/27^2 +1/37^2 +1/59^2 +1/69^2 +1/91^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(11π/32)}^2

 A4=1/7^2 +1/25^2 +1/39^2 +1/57^2 +1/71^2 +1/89^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(9π/32)}^2

 A5=1/9^2 + 1/23^2 +1/41^2 +1/55^2 +1/73^2 +1/87^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(7π/32)}^2

 A6=1/11^2 +1/21^2 +1/43^2 +1/53^2 +1/75^2 +1/85^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(5π/32)}^2

 A7=1/13^2 +1/19^2 +1/45^2 +1/51^2 +1/77^2 +1/83^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(3π/32)}^2

 A8=1/15^2 +1/17^2 +1/47^2 +1/49^2 +1/79^2 +1/81^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(π/32)}^2

  A1 -A2 -A3 +A4 +A5 -A6 -A7 +A8=L1(2)=(√2/16)π^2となります。A1〜A6式に対しExcelマクロで数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。タンジェントの部分分数展開式は、次の通りです。

  1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 これを1回微分して得られる次の@式を使います。

  1/(1^2-x^2)^2 +1/(3^2-x^2)^2 +1/(5^2-x^2)^2 +・・=(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2 + Others(x) ---@

 ここで右辺のOthers(x)は、Others(x)=-{π/(8x^3)}tan(πx/2)ですが、無視してよい個所なのでOthers(x)としました。

 @のxに特定の値を代入することで、次のようにL1(2)の分割級数が求まっていきます。

 @のxに値15/16を代入すると、A1が得られる。

 @のxに値13/16を代入すると、A2が得られる。

 @のxに値11/16を代入すると、A3が得られる。

 @のxに値 9/16を代入すると、A4が得られる。

 @のxに値 7/16を代入すると、A5が得られる。

 @のxに値 5/16を代入すると、A6が得られる。

 @のxに値 3/16を代入すると、A7が得られる。

 @のxに値 1/16を代入すると、A8が得られる。

注記:左辺はL1(2)分割級数だけを拾い、右辺はそれに対応する(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2の値だけを拾います(すなわち、左辺ではL1(2)分割級数以外の級数を無視し、右辺ではOthers(x)の値は無視します。それでOK)。

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 L1(2)の8分割が求まりました。

 じつはL1(2)の分身たちは、ζ(2)の8分割の分身たちと全く同じです。 ζ(2)つまりZ(2)の8分割は下記<付録>で示したので見てください。L1(2)は、Z(2)と全く同じパーツ(分身)から作られていることがわかります。

 違いは、パーツの組み合わせ方(加減の演算)の違いだけです。次の通り。

  Z(2) =A1 +A2 +A3 +A4 +A5 +A6 +A7 +A8

  L1(2)=A1 -A2 -A3 +A4 +A5 -A6 -A7 +A8

 このようにL1(2)は、Z(2)と同じ部品からできています。ゼータは分身たちから構成されているのです。

 これまでの結果を更新しておきます。

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 リーマンゼータζ(s)、 導手N=1       ⇒ n分割可能である。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ、導手N=4    ⇒ n分割可能である。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ、導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能である。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ、 導手N=5   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割が可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  LP(s) 虚2次体Q(√-7)ゼータ、導手N=7   ⇒ 3/6/9/12分割可能である。3n分割可能と考えられる(予想)。3n分割が最良か(問題)。

  L2(s) 虚2次体Q(√-2)ゼータ、導手N=8   ⇒ 2/4/6/8/10/12分割可能である。2n分割可能と考えられる(予想)。2n分割が最良か(問題)。

  L1(s) 実2次体Q(√2)ゼータ、 導手N=8   ⇒ 2/4/6/8分割可能である。

 注記:nは1以上の整数  以上。(杉岡幹生)

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<付録>[ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その13)or(その15)から抜粋、一部編集]

  Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・=(3/4)ζ(2)=π^2/8

 上記の通り、Z(s)は本質的にリーマンゼータζ(s)と同じです。

 次のZ(2)8分割は、(その13)ではゼータの香りの漂う公式から、また(その15)ではタンジェント部分分数展開式を使って導出しています。(この二つの公式は本質的には同じものです)

■Z(2)8分割

 A1 = 1 +1/31^2 +1/33^2 +1/63^2 +1/65^2 +1/95^2 + ・・ =(π/32)^2 /{cos(15π/32)}^2

 A2=1/3^2 +1/29^2 +1/35^2 +1/61^2 +1/67^2 +1/93^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(13π/32)}^2

 A3=1/5^2 +1/27^2 +1/37^2 +1/59^2 +1/69^2 +1/91^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(11π/32)}^2

 A4=1/7^2 +1/25^2 +1/39^2 +1/57^2 +1/71^2 +1/89^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(9π/32)}^2

 A5=1/9^2 + 1/23^2 +1/41^2 +1/55^2 +1/73^2 +1/87^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(7π/32)}^2

 A6=1/11^2 +1/21^2 +1/43^2 +1/53^2 +1/75^2 +1/85^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(5π/32)}^2

 A7=1/13^2 +1/19^2 +1/45^2 +1/51^2 +1/77^2 +1/83^2 +・・=(π/32)^2 /{cos(3π/32)}^2

 A8=1/15^2 +1/17^2 +1/47^2 +1/49^2 +1/79^2 +1/81^2 +・・ =(π/32)^2 /{cos(π/32)}^2

   A1 +A2 +A3 +A4 +A5 +A6 +A7 +A8=Z(2)=π^2/8となります。

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