■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その40,杉岡幹生)

 今回もLN(2)の分割の続きを行ないますが、その前にこれまでの結果をまず掲げます。

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 ζ(s)”仮想”実2次体Q(√1)ゼータ,導手N=1 ⇒ n分割可能。

  L(s) 虚2次体Q(√-1)ゼータ,導手N=4   ⇒ n分割可能。

  LA(s) 虚2次体Q(√-3)ゼータ,導手N=3   ⇒ 1〜10分割可能。n分割可能と考えられる(予想)。

  LN(s) 実2次体Q(√5)ゼータ,導手N=5    ⇒ 2分割、4分割、6分割が可能。2n分割可能と考えられる(予想)。2分割が最良か?(問題)

 注記:nは1以上の整数

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 さて、前回は実2次体Q(√5)ゼータLN(s)の6分割まで見たので、今回はその8分割、10分割を調べます。

 簡単に復習から。LN(s)ゼータは次のディリクレ指標χ(n)をもつゼータです。

 LN(s)=1 -1/2^s -1/3^s +1/4^s +1/6^s -1/7^s -1/8^s +1/9^s +1/11^s -1/12^s -1/13^s +1/14^s ・・ -----@

(導手N=5, n≡1 or 4 mod 5に対しχ(n)=1,  n≡2 or 3 mod 5に対しχ(n)=-1, その他のnではχ(n)=0)

 LN(s)の特殊値では、LN(2)、LN(4)、LN(6)・・が明示的な特殊値をもちます。

 以下LN(2)を代表選手として考察します。(LN(4)、LN(6)、・・でも同じ議論が成立)

 Ln(2)=1 -1/3^2 -1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 -1/13^2 -1/17^2 +1/19^2 +・・ とおくと、次式が成立します。詳細は(その38)参照。

 Ln(2)=(1 +1/2^2)LN(2) --------A

 これより、Ln(2)はLN(2)と本質的に同じであり、よってLn(s)はLN(s)と本質的に同じです。以下でLn(2)が出てきます。

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 では、以下にLN(2)またはLn(2)の8分割、10分割を示します。”⇒無視”は分割に関係しないので無視します。

■Ln(2)8分割

 A1=1/1^2 +1/39^2 +1/41^2 +1/79^2 +1/81^2 +1/119^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(19π/40)}^2

 A2=1/3^2 +1/37^2 +1/43^2 +1/77^2 +1/83^2 +1/117^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(17π/40)}^2

 A3=1/5^2 +1/35^2 +1/45^2 +1/75^2 +1/85^2 +1/115^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(15π/40)}^2 ⇒無視

 A4=1/7^2 +1/33^2 +1/47^2 +1/73^2 +1/87^2 +1/113^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(13π/40)}^2

 A5=1/9^2 +1/31^2 +1/49^2 +1/71^2 +1/89^2 +1/111^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(11π/40)}^2

 A6=1/11^2 +1/29^2 +1/51^2 +1/69^2 +1/91^2 +1/109^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(9π/40)}^2

 A7=1/13^2 +1/27^2 +1/53^2 +1/67^2 +1/93^2 +1/107^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(7π/40)}^2

 A8=1/15^2 +1/25^2 +1/55^2 +1/65^2 +1/95^2 +1/105^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(5π/40)}^2 ⇒無視

 A9=1/17^2 +1/23^2 +1/57^2 +1/63^2 +1/97^2 +1/103^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(3π/40)}^2

 A10=1/19^2 +1/21^2 +1/59^2 +1/61^2 +1/99^2 +1/101^2 +・・=(π/40)^2 /{cos(π/40)}^2

 A1 -A2 -A4 +A5 +A6 -A7 -A9 +A10=Ln(2)であることがわかります。上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。 右辺値の”A1 -A2 -A4 +A5 +A6 -A7 -A9 +A10”もLn(2)の収束値に一致しました。

■LN(2)10分割

 A1=1/1^2 +1/24^2 +1/26^2 +1/49^2 +1/51^2 +1/74^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(23π/50)}^2

 A2=1/2^2 +1/23^2 +1/27^2 +1/48^2 +1/52^2 +1/73^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(21π/50)}^2

 A3=1/3^2 +1/22^2 +1/28^2 +1/47^2 +1/53^2 +1/72^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(19π/50)}^2

 A4=1/4^2 +1/21^2 +1/29^2 +1/46^2 +1/54^2 +1/71^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(17π/50)}^2

 A5=1/5^2 +1/20^2 +1/30^2 +1/45^2 +1/55^2 +1/70^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(15π/50)}^2 ⇒無視

 A6=1/6^2 +1/19^2 +1/31^2 +1/44^2 +1/56^2 +1/69^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(13π/50)}^2

 A7=1/7^2 +1/18^2 +1/32^2 +1/43^2 +1/57^2 +1/68^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(11π/50)}^2

 A8=1/8^2 +1/17^2 +1/33^2 +1/42^2 +1/58^2 +1/67^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(9π/50)}^2

 A9=1/9^2 +1/16^2 +1/34^2 +1/41^2 +1/59^2 +1/66^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(7π/50)}^2

 A10=1/10^2 +1/15^2 +1/35^2 +1/40^2 +1/60^2 +1/65^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(5π/50)}^2 ⇒無視

 A11=1/11^2 +1/14^2 +1/36^2 +1/39^2 +1/61^2 +1/64^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(3π/50)}^2

 A12=1/12^2 +1/13^2 +1/37^2 +1/38^2 +1/62^2 +1/63^2 +・・=(π/25)^2 /{cos(π/50)}^2

 A1 -A2 -A3 +A4 +A6 -A7 -A8 +A9 +A11 -A12=LN(2)であることがわかります。上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。 右辺値の”A1 -A2 -A3 +A4 +A6 -A7 -A8 +A9 +A11 -A12”もLN(2)の収束値に一致しました。

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 上の分割級数の導出過程を簡単に述べます。

 三角関数タンジェントの部分分数展開式をG[1](x)と表現すると、次のようになります。

 G[1](x)=1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・=(π/(4x))tan(πx/2)

 LN(2)では、これを1回微分して得られる次の生成核G[2](x)を使います。

 G[2](x)=1/(1^2-x^2)^2 +1/(3^2-x^2)^2 +1/(5^2-x^2)^2 +・・=(π/(4x))^2/{cos(πx/2)}^2 + Others(x)

 ここで右辺のOthers(x)は、じつはOthers(x)=-{π/(8x^3)}tan(πx/2)ですが、今回は無視してよい個所なのでOthers(x)としました。

 G[2](x)のxに特定の値を代入することで、LN(2)またはLn(2)の分割級数が次々に求まっていきます。以下の通りです。

 G[2](x)のxに値 19/20を代入すると、Ln(2)8分割のA1が得られる。

 G[2](x)のxに値 17/20を代入すると、Ln(2)8分割のA2が得られる。

 G[2](x)のxに値 15/20を代入すると、Ln(2)8分割のA3が得られる。⇒無視。15/20代入は3/4代入。ζ(2)2分割の一つが出現。

 G[2](x)のxに値 13/20を代入すると、Ln(2)8分割のA4が得られる。

 G[2](x)のxに値 11/20を代入すると、Ln(2)8分割のA5が得られる。

 G[2](x)のxに値 9/20を代入すると、Ln(2)8分割のA6が得られる。

 G[2](x)のxに値 7/20を代入すると、Ln(2)8分割のA7が得られる。

 G[2](x)のxに値 5/20を代入すると、Ln(2)8分割のA8が得られる。⇒無視。5/20代入は1/4代入。ζ(2)2分割の一つが出現。

 G[2](x)のxに値 3/20を代入すると、Ln(2)8分割のA9が得られる。

 G[2](x)のxに値 1/20を代入すると、Ln(2)8分割のA10が得られる。

 G[2](x)のxに値 23/25を代入すると、LN(2)10分割のA1が得られる。

 G[2](x)のxに値 21/25を代入すると、LN(2)10分割のA2が得られる。

 G[2](x)のxに値 19/25を代入すると、LN(2)10分割のA3が得られる。

 G[2](x)のxに値 17/25を代入すると、LN(2)10分割のA4が得られる。

 G[2](x)のxに値 15/25を代入すると、LN(2)10分割のA5が得られる。⇒無視。15/25代入は3/5代入。LN(2)2分割の一つが出現。

 G[2](x)のxに値 13/25を代入すると、LN(2)10分割のA6が得られる。

 G[2](x)のxに値 11/25を代入すると、LN(2)10分割のA7が得られる。

 G[2](x)のxに値 9/25を代入すると、LN(2)10分割のA8が得られる。

 G[2](x)のxに値 7/25を代入すると、LN(2)10分割のA9が得られる。

 G[2](x)のxに値 5/25を代入すると、LN(2)10分割のA10が得られる。⇒無視。5/25代入は1/5代入。LN(2)2分割の一つが出現。

 G[2](x)のxに値 3/25を代入すると、LN(2)10分割のA11が得られる。

 G[2](x)のxに値 1/25を代入すると、LN(2)10分割のA12が得られる。

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 このようにLN(s)でも規則的に分身たちが生成され、真の分割が実現されていきます。代入する値が分母、分子で約分される場合が無視するものになります。

 「無視したものを除いた残りできっちり分割が実現されている」ことに注目してください。きれいな秩序が存在しています。

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