■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その31,杉岡幹生)

 前回の(その30)では、L(1),L(3),L(5)・・がn分割可能であることを報告しましたが、今回はその結果に付随してリーマンゼータζ(s)もn分割可能であることを述べます。また,ζ(2)の3分割、5分割例も示します。

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 「L(1),L(3),L(5)・・がn分割可能」という事実から、じつは自動的に「ζ(2),ζ(4),ζ(6)・・もn分割可能である」ことが言えるのですが、それを説明します。

 L(s)の代表をL(1)、後者の代表をζ(2)の変形版Z(2)として説明します。Z(2)は次の変形でもわかるとおり、ζ(2)と本質的に同じものであることに注意ください。

 Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・

   =1 +1/2^2 +1/3^2 +1/4^2 + 1/5^2 +1/6^2 +1/7^2・・ - (1/2^2 +1/4^2 +1/6^2 + ・・)

   =ζ(2) - 1/2^2ζ(2)

   =(3/4)ζ(2)=π^2/8  ---------@

 さて、L(1)とZ(2)を並べると次のようになります。

 L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +・・

 Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・

 この級数は、+-の符号と指数を無視すると同じ形となっています(1,1/3,1/5,1/7・・が同じ!)。さらに、これまで見てきた分割の計算論理から、分割された級数も(符号と指数を無視すると)まったく同じ形となります。

 L(1)では、例えば5分割の場合、分割された分身たちをA1,A2,A3,A4,A5とすると、A1 -A2 +A3 -A4 +A5=L(1)---A となります((その28)参照。)

そして、Z(2)の5分割の場合、分割された分身たちをa1,a2,a3,a4,a5とすると、a1 +a2 +a3 +a4 +a5=Z(2) ---Bとなります。(下記結果を参照)

 A○とa○の分身たちは、符号と指数を無視すると、まったく同じ形をしています。したがってL(s)の分割の計算論理は、Z(2)でもそのまま引き継がれ、Z(2)の分身たちによってZ(2)が正確に生成されていくことになります。L(1)の分身たちがL(1)を構成できるなら、ζ(2)の分身たちがζ(2)を構成できるのは明らかであり、Aが成立したら自動的にBも成立します。例えば(その28)のL(1)3分割、5分割と下記結果のZ(2)3分割、5分割を比べてください。これより「ζ(2)はn分割可能である」とわかります。なお、ζ(2)でn分割可能なら、これまで見た分割の計算論理からζ(4)、ζ(6)・・でもn分割可能であることが容易にいえます(例えば、(その17)参照)。以上の考察から「ζ(2),ζ(4),ζ(6)・・もn分割可能である」ことがわかります。

 読者も一度手計算してもらったら実感として上記のことがわかると思います。中学生程度の計算で、ゼータの深いところを見ることができます。

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 さて、原理的な説明はそれくらいにして、これまでまだ示していなかったZ(2)の奇数分割”2n-1分割”の3分割、5分割の結果を以下に示しておきます。なお、Z(2)の1分割、2分割、4分割、8分割の例は(その15)を参照ください。

では、以下にZ(2)の3分割、5分割を示します。統一的に見たいので”1分割”も加えました。

■Z(2)1分割

 Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・=(π/4)^2 /{cos(π/4)}^2

右辺はπ^2/8になり上記@に一致します。

■Z(2)3分割

A1= 1 + 1/11^2 +1/13^2 +1/23^2 + 1/25^2 +1/35^2 +・・=(π/12)^2 /{cos(5π/12)}^2

A2=1/3^2 +1/9^2 +1/15^2 +1/21^2 + 1/27^2 +1/33^2 +・・=(π/12)^2 /{cos(3π/12)}^2

A3=1/5^2 +1/7^2 +1/17^2 +1/19^2 + 1/29^2 +1/31^2 +・・=(π/12)^2 /{cos(π/12)}^2

 A1 +A2 +A3=Z(2)であることがわかります。念のため、上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

右辺値に対して”A1 +A2 +A3”を計算すると、@のπ^2/8に一致しました。

■Z(2)5分割

A1= 1 + 1/19^2 +1/21^2 +1/39^2 + 1/41^2 +1/59^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(9π/20)}^2

A2=1/3^2 +1/17^2 +1/23^2 +1/37^2 + 1/43^2 +1/57^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(7π/20)}^2

A3=1/5^2 +1/15^2 +1/25^2 +1/35^2 + 1/45^2 +1/55^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(5π/20)}^2

A4=1/7^2 +1/13^2 +1/27^2 +1/33^2 + 1/47^2 +1/53^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(3π/20)}^2

A5=1/9^2 +1/11^2 +1/29^2 +1/31^2 + 1/49^2 +1/51^2 +・・=(π/20)^2 /{cos(π/20)}^2

 A1 +A2 +A3 +A4 +A5=Z(2)であることがわかります。念のため、上記式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。 右辺値に対して”A1 +A2 +A3 +A4 +A5”を計算すると、@のπ^2/8に一致しました。

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