■3次元曲面上の27本の直線と3次元空間内の4本の直線(その3)

【1】2次代数曲線上の点

 一直線上にない3点を通る2次曲線,4点を通る3次曲線はただひとつ存在しますが,それは座標軸の方向が定まっている場合:

  y=ax^2+bx+c,y=ax^3+bx^2+cx+d

のようにy=f(x)の場合であって,一般には,平面上の任意の位置にある5点が唯一の円錐曲線を決定します.ニュートンは「プリンキピア」のなかで5点を通る円錐曲線の作図法などを案出しながら壮大な天体力学を展開しています.

 また,4つの円錐曲線が与えられたとき,それらすべてに接する円錐曲線は無限にあり,6つの円錐曲線が与えられたとき,それらすべてに接する円錐曲線は全く存在しない.

 5つの円錐曲線が与えられたとき,それらすべてに接する複素円錐曲線は3264本ある.3264本の接円錐曲線のすべてが実曲線である場合も発見されている.

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【2】3次代数曲線上の点

 同様に,3次曲線とはf(x,y)=0が2変数x,yの3次あるいは3次以下の方程式で与えられた曲線です.3次曲線の例としては,ディオクレスのシッソイド(x^3+xy^2=y^2)があげられますが,これは古代ギリシアにおいて立方体倍積問題に用いられた曲線です.また,

  y=x^3+x^2+x+1

  y^3=xy^2−2x^2y+y−3

なども3次曲線で,一般式の項数は10になります.

 したがって,9個の点が一般的な選ばれ方をしていれば,その9個の点を通る3次局線は一意に存在します.3次曲線には数多くの興味深い性質があります.

[1]直線の3本組が2組あって,それが9個の点で交わっているとする.このとき,8個の点を通る3次曲線は残りの1点も通る.

[2]直線を含まない3次曲線には9つの変曲点をもつが,そのうち実であるのは3つよりは多くない.

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【3】平面代数曲線上の点

 平面内n次曲線f(x,y)=0の一般式の項数は,

  3Hn=n+2Cn=(n+2)(n+1)/2

で計算されます.

 n次平面代数曲線の方程式f(x,y)=0は,(n+1)(n+2)/2個の係数をもっていますが,fに定数を掛けても曲線は変わりませんから,n次曲線はn(n+3)/2個のパラメータに依っていることになります.そこで,平面内に与えられたn(n+3)/2個の点(xi,yi)を通るという条件によって曲線を決定するという問題が自然に提起されます.ニュートンはこうした研究を応用して,2次曲線上の5点,3次曲線上の7点が与えられた場合にこれを作図する方法を見いだしたのです.

 まとめると,2個の点を通る直線はひとつ,5個の点を通る2次曲線はひとつ,9個の点を通る3次曲線はひとつ,14個の点を通る4次曲線はひとつ,・・・,(n+2,n)−1=(n+1)(n+2)/2−1=n(n+3)/2個の点を通るn次曲線はひとつあります.

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 平面内の2次曲線や空間内の2次曲面の分類はよく知られていて,高校で習うところです.2次曲線の分類については,3種類の円錐曲線,すなわち楕円,双曲線,放物線になりますが,同じことをもっと高次の曲線・曲面に対して考えるのは自然なことでしょう.18,19世紀になると,2次曲線論に続いて3次および4次曲線について論じられました.

 3次曲線の分類には,2次曲線とは異なった種類の難解さが要求されましたが,ニュートンはあらゆる場合を考察して,最終的に3次曲線は全部で78種類が必要であることを示すに至り,さらに3次曲線の一般式が5個の標準形に帰することを示しました.ニュートンはこうした研究を応用して,2次曲線上の5点,3次曲線上の7点が与えられた場合にこれを作図する方法を見いだしています.

 ニュートンの3次曲線の分類に引き続いて,オイラーは4次平面曲線の分類を企てましたが,可能な場合の数が非常に多いという理由で断念しています.この問題に対する答えは長い間知られていなかったのですが,プリュッカーが19世紀に4次曲線の152の型を数え上げることによって解かれました.プリュッカーはオイラーが4次曲線の分類で犯した多くの誤りを見つけたのですが,18世紀の解析幾何とは違って,高次曲線,曲面は解析幾何の対称ではなく,代数幾何の分野となりました.

[補]ニュートンは係数の値によってとりうる3次曲線の形を72種類挙げた.しかし,実際には78種類あり,残り6種類のうち4種類はスターリング,2種類はニコルとベルヌーイが発見している.

[補]代数幾何学において重要な変換に双有理変換(クレモナ変換)があるが,ニュートンは楕円,放物線,双曲線から3次曲線を得るのに双有理変換を使っている.この例からわかるように代数曲線の次数は双有理変換で不変ではないが,種数は不変である.すなわち,ニュートンは代数操作という変換を用いており,78種類というのは(幾何学的な分類ではなく)代数的な分類となっている.プリュカーは幾何学的な分類方法によって3次曲線を219種に分類している(1835年).

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