■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その28,杉岡幹生)

 L(s)は3分割、5分割も可能とわかったので報告します。

 これまで「L(s)は少なくとも2n分割(偶数分割)可能である」ことはわかっていました。そして2n分割が最良だろうとばくぜんと思っていましたが、私の思い違いでした。L(s)は奇数分割も可能なようです。

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 今回は3分割、5分割を例として報告します。2n-1分割可能!であることはほぼ間違いありませんが、一般化はもう少し先に述べます。この奇数分割も真の分割になっています。

 次のL(1)を例にとり、2n-1分割のn=1,2,3の場合すなわち1分割、3分割、5分割を見てみます。これまで見てきたようにL(3)、L(5)、L(7)・・も本質的に同じなので、L(1)を代表選手として示します。なお1分割は、L(s)そのもので”分割無し”ですが、規則性を見る上で大事なのでこれも記しました。

  L(1)=1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +1/13 -15 + ・・=π/4

■L(1)1分割

A1= 1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +・・ =(π/4)tan(π/4)

 あえてtan()の形を残しました。

■L(1)3分割

A1= 1 -1/11 +1/13 -1/23 +1/25 -1/35 +・・ =(π/12)tan(5π/12)

A2=1/3 -1/9 +1/15 -1/21 +1/27 -1/33 +・・=(π/12)tan(3π/12)

A3=1/5 -1/7 +1/17 -1/19 +1/29 -1/31 +・・=(π/12)tan(π/12)

 A1 -A2 +A3=L(1) であることを確認ください。一応念のため、上記全式に対し数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

■L(1)5分割

A1= 1 -1/19 +1/21 -1/39 +1/41 -1/59 +・・ =(π/20)tan(9π/20)

A2=1/3 -1/17 +1/23 -1/37 +1/43 -1/57 +・・=(π/20)tan(7π/20)

A3=1/5 -1/15 +1/25 -1/35 +1/45 -1/55 +・・=(π/20)tan(5π/20)

A4=1/7 -1/13 +1/27 -1/33 +1/47 -1/53 +・・ =(π/20)tan(3π/20)

A5=1/9 -1/11 +1/29 -1/31 +1/49 -1/51 +・・ =(π/20)tan(π/20)

 A1 -A2 +A3 -A4 +A5=L(1) であることを確認ください。上記全式に対し数値検証しましたが、全て左辺の級数は右辺値に一致しました。

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 上の分割式の導出過程を簡単に述べます。次の部分分数展開式@を使います。

 1/(1^2-x^2) +1/(3^2-x^2) +1/(5^2-x^2) +・・ =(π/(4x))tan(πx/2) ---@

 このxに次の値を代入することで、5分割された級数とその値が求まります。

 @のxに9/10を代入すると、L(1)5分割のA1が得られる。

 @のxに7/10を代入すると、L(1)5分割のA2が得られる。

 @のxに5/10を代入すると、L(1)5分割のA3が得られる。

 @のxに3/10を代入すると、L(1)5分割のA4が得られる。

 @のxに1/10を代入すると、L(1)5分割のA5が得られる。

また3分割、1分割も同様にして求まります(3分割は○/6代入)。

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 このようにL(1)の1分割、3分割、5分割が求まりました。

 さて、今回の奇数分割の場合でも、(その22)の2n分割で見た”興味ある特徴”が出ているので見てみましょう。

 それは『2n分割においてそれが2^n分割でない場合は、その当該分割以外の分割の結果も含まれる』と類似の現象なのですが、5分割を例に説明します。

 5分割のA3は次の通りです。

 A3=1/5 -1/15 +1/25 -1/35 +1/45 -1/55 +・・=(π/20)tan(5π/20)

 この左辺を変形し、右辺tanの()内を約分すると次のようになります。

A3=1/5(1 -1/3 +1/5 -1/7 +1/9 -1/11 +・・)=(π/20)tan(π/4)

 これはL(1)そのもの(1分割)です!

 「5分割では、その当該分割以外の分割の結果(1分割)も含まれて、真の分割が実現される」という形になっているのです。

(その22)の2n分割では1分割は出ませんでしたが、奇数分割では真ん中のものにおいて(5分割ではA3で)、1分割が出る形になっています。2n分割と2n-1分割では微妙な違いがあります。3分割もA2で同じようになっていることを確認してください。面白いですね。  (杉岡幹生)

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