■おかあさんのための数学教室(その62)

【7】統計力学

 n個の箱にr個の玉を入れる問題を考えます.箱を空間の小領域,玉を気体の分子と見立てて,ボルツマンは統計力学(Maxwell-Boltzmann統計)を構成しました.MB統計では1つの玉の入れ方がn通りで,玉がr個ですから全部でn^r通りの入れ方があると考えます.しかし,このように考えると,黒体輻射の実験がどうしてもうまく説明できませんでした.

 そこで,玉は区別がつかないと仮定すると,n個の箱に区別できないr個の玉を入れる入れ方は重複組合せnHr通り=n+r-1Cr通りあることになり,新たな統計力学が構成されます.この統計力学はBose-Einstein統計と呼ばれ,光子や中性子がうまく当てはまります.BE統計にしたがう素粒子はボゾン(boson)と呼ばれます.

 さらに,1つの箱には玉は1つしか入らないとするパウリの排他則を仮定すると重複のない組合せnCr通りとなり,Fermi-Diracの統計が得られます.FD統計にしたがう素粒子に電子や陽子があり,それらはフェルミオン(fermion)と総称されます.

 別の言い方をすると,宇宙を作っている粒子には2種類あり,物質の素になる粒子がフェルミオン(電子やクォークなど),力の素になる粒子がボゾン(光子など)なのですが,宇宙はひもから構成されているというのが「ひも理論」であり,フェルミオンのひもとボゾンのひもの2種類からなるというわけです.ひも理論の場合,フェルミオンは10次元,ボゾンは26次元というとんでもない値をとるのです.

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