■ゼータの香りの漂う公式の背後にある構造(その13,杉岡幹生)

 ゼータ分割に関して、前回のζ(2)の4分割に続き、その2分割、8分割ができましたので報告します。

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ζ(2)の分割を試みますが、前回同様すこし変形した次のZ(2)を考察します。

 Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・

=π^2/8

 Z(2)は次のように変形でき、本質的にζ(2)に等しいものとなっています。

Z(2)=1 +1/3^2 +1/5^2 +1/7^2 +1/9^2 +1/11^2 +・・

=1 +1/2^2 +1/3^2 +1/4^2 + 1/5^2 +1/6^2 +1/7^2・・ -

(1/2^2 +1/4^2 +1/6^2 + ・・)

=ζ(2) - 1/2^2ζ(2)

=(1-1/2^2)ζ(2)

=(3/4)ζ(2) ------@

さて今回Z(2)すなわちζ(2)の2分割、8分割ができたわけですが次の通りです。前回の4分割も一緒に示します。

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■2分割

A1= 1 + 1/7^2 +1/9^2 +1/15^2 + 1/17^2 +1/23^2 +・・

 =(π/8)^2 /{cos(3π/8)}^2

A2=1/3^2 +1/5^2 +1/11^2 +1/13^2 + 1/19^2 +1/21^2 +・・

 =(π/8)^2 /{cos(π/8)}^2

 1/{cos()}^2の部分を計算した結果は、以下の通りです。

1/{cos(3π/8)}^2= 4 +2√2

1/{cos(π/8)}^2 = 4 -2√2

 A1 +A2=Z(2)=(3/4)ζ(2)=π^2/8 であることが容易にわかります。念のため、上記2式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

これらはZ(2)すなわちζ(2)に対する”真の分割”となっています。

[注記]上記@のZ(2)は”見せかけの分割(分身)”です。分割された級数=(有理数)×ゼータの形にできるのはすべて”見せかけの分割”となります。A1,A2はそうできないので”真の分割”です。

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■4分割

B1= 1 +1/15^2 +1/17^2 +1/31^2 +1/33^2 +1/47^2 +・・

 =(π/16)^2 /{cos(7π/16)}^2

B2=1/3^2 +1/13^2 +1/19^2 +1/29^2 +1/35^2 +1/45^2 +・・

 =(π/16)^2 /{cos(5π/16)}^2

B3=1/5^2 +1/11^2 +1/21^2 +1/27^2 +1/37^2 +1/43^2 +・・

 =(π/16)^2 /{cos(3π/16)}^2

B4=1/7^2 +1/9^2 +1/23^2 +1/25^2 +1/39^2 +1/41^2 +・・

 =(π/16)^2 /{cos(π/16)}^2

 1/{cos()}^2の部分を計算した結果は、以下の通りです。

1/{cos(7π/16)}^2= 8 +4√2 + 4√(2+√2) +2√(4+2√2)

1/{cos(5π/16)}^2= 8 -4√2 + 4√(2-√2) -2√(4-2√2)

1/{cos(3π/16)}^2= 8 -4√2 - 4√(2-√2) +2√(4-2√2)

1/{cos(π/16)}^2 = 8 +4√2 - 4√(2+√2) -2√(4+2√2)

 B1 +B2 +B3 +B4 =Z(2)=(3/4)ζ(2)=π^2/8 であることがわかります。上記4式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。

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■8分割

C1 = 1 +1/31^2 +1/33^2 +1/63^2 +1/65^2 +1/95^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(15π/32)}^2

C2=1/3^2 +1/29^2 +1/35^2 +1/61^2 +1/67^2 +1/93^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(13π/32)}^2

C3=1/5^2 +1/27^2 +1/37^2 +1/59^2 +1/69^2 +1/91^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(11π/32)}^2

C4=1/7^2 +1/25^2 +1/39^2 +1/57^2 +1/71^2 +1/89^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(9π/32)}^2

C5=1/9^2 + 1/23^2 +1/41^2 +1/55^2 +1/73^2 +1/87^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(7π/32)}^2

C6=1/11^2 +1/21^2 +1/43^2 +1/53^2 +1/75^2 +1/85^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(5π/32)}^2

C7=1/13^2 +1/19^2 +1/45^2 +1/51^2 +1/77^2 +1/83^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(3π/32)}^2

C8=1/15^2 +1/17^2 +1/47^2 +1/49^2 +1/79^2 +1/81^2 +・・

 =(π/32)^2 /{cos(π/32)}^2

 上記8式に対しExcelマクロで数値検証を実行しましたが、全て左辺の級数は右辺値に収束しました。また右辺値の和がπ^2/8となることも確かめました。

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 上記式の導出過程を簡単に述べます。ゼータの香りの漂う公式

 1/(1^2+a^2) +1/(3^2+a^2) +1/(5^2+a^2) +1/(7^2+a^2) +・・

=(π/(4a))・{e^(aπ)-1}/{e^(aπ)+1}

をaについて1回微分した次の式を使います。

 1/(1^2+a^2)^2 +1/(3^2+a^2)^2 +1/(5^2+a^2)^2 +1/(7^2+a^2)^2 +・・

=(π/(8a^3))・{e^(aπ)-1}/{e^(aπ)+1}-(π^2/(4a^2))・e^(aπ)/{e^(aπ)+1}^2 ----A

 このaに次の複素数を代入することで、分割された級数が求まります。

 Aのaに複素数3i/4を代入すると、A1が得られる。

 Aのaに複素数 i/4を代入すると、A2が得られる。

 Aのaに複素数7i/8を代入すると、B1が得られる。

 Aのaに複素数5i/8を代入すると、B2が得られる。

 Aのaに複素数3i/8を代入すると、B3が得られる。

 Aのaに複素数 i/8を代入すると、B4が得られる。

 Aのaに複素数15i/16を代入すると、C1が得られる。

 Aのaに複素数13i/16を代入すると、C2が得られる。

 Aのaに複素数11i/16を代入すると、C3が得られる。

 Aのaに複素数 9i/16を代入すると、C4が得られる。

 Aのaに複素数 7i/16を代入すると、C5が得られる。

 Aのaに複素数 5i/16を代入すると、C6が得られる。

 Aのaに複素数 3i/16を代入すると、C7が得られる。

 Aのaに複素数 i/16を代入すると、C8が得られる。

以上。

 上記を眺めるだけで、美しい秩序からゼータの分割値が湧き出ていることがわかります。なお、これらは全て本質的な分割(真の分割)となっています。

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 L(s)ゼータ同様、リーマンゼータζ(s)もその構造から少なくとも2^n分割できる、すなわち無限に多く分割できることがわかります。単純なアルゴリズムの計算で16分割、32分割・・が簡単に導出できるのです。

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 これまで何度か、低い次数すなわちL(s)ゼータでしたら、L(1),L(3)の分割を求めるのは楽だが、高い次数L(5)、L(7)・・の場合はとても大変!と言ってきました。それはζ(s)でも同じです。

 なんとか高次の場合も簡単にわからないか?と色々調べているうちに、計算量を劇的に減らせる方法を見つけられたと思います。その方法を使えば割合楽にL(5)、L(7)・・やζ(4)、ζ(6)・・の分割を求められます。ただし、その方法が本当に正確に働いてくれるのか、もう少し検証を進める必要があります。確かだと分かればまた報告します。   (杉岡幹生)

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