■オイラーの素数生成式(その37)

【2】ラビノヴィッチの定理

 2次方程式

  x^2+x+41=0

の解は

  x=1/2(−1±√−163)

であり,虚2次体Q(√−163)の理論と深く関係しているのですが,この不思議な性質も類数1に関するラビノヴィッチの定理から説明されます.

 一般に,fq(x)が0≦x≦q−2なるすべてのxについて素数となることと虚2次体Q(√d)との関係が,ラビノヴィッチにより示されています(1912年).

[1]d=2,3(mod4)のとき

  q=−d        

  fq(x)=x^2+q

[2]d=1(mod4)のとき

  q=(1−d)/4

  fq(x)=x^2+x+q

とおきます.

 [2]がオイラーの公式に対応しているわけですが,連続する0≦x≦q−2に対してすべて素数になるには

  「qが素数で,虚2次体Q(√1−4q)が類数1をもつときに限る.」

というのが,ラビノヴィッチの定理です.

 類数1については後述しますが,類数が1となる虚2次体Q(√d)は

  −d=1,2,3,7,11,19,43,67,163

しかありません.[2]でd=−163=1(mod4)の場合を考えると,q=41.したがって,

  fq(x)=x^2+x+41

となります.このようにして,上の現象は虚2次体Q(√−163)と関係していることがわかります.

 同様に,1変数の2次多項式

  n^2+n+17

も高い確率で素数を生成しますが,d=−67=1(mod4)の場合を考えると,q=17ですから,虚2次体Q(√−67)と関係しているというわけです.

  n^2+n+41(0≦n≦39なるすべてのnについて素数となる) ←→ Q(√−163)

でしたが,以下同様に

  n^2+n+17(0≦n≦15) ←→ Q(√−67)

  n^2+n+11(0≦n≦9)  ←→ Q(√−43)

  n^2+n+5(0≦n≦3)   ←→ Q(√−19)

  n^2+n+3(0≦n≦1)   ←→ Q(√−11)

  n^2+n+2(0≦n≦0)   ←→ Q(√−7)

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