■ケーリーの公式(その4)

 ここでは木グラフの場合も含んで一般のグラフについて考えることにする.すなわち閉路を含んでもよいし連結でなくてもよいものとする.

 v=kの場合,異なるグラフの総数は2^(kC2)であるが,同形でないグラフの個数はこれよりもかなり少ない.たとえばk=3のときは8個のグラフがあるが,同型でないものは4つしかない.k=4の同型でないグラフの個数は11個である.

  位数k        :1,2,3, 4,・・・

  同等でないグラフの総数:1,2,8,64,・・・

  同型でないグラフの総数:1,2,4,11,・・・

 前節と同様の議論により,同値類の総数は

  2^(kC2)/k!

以上になるので,k頂点のグラフで同型でないものの総数もこの値以上になる.

  log(2^(kC2)/k!)=kC2−logk!

              ≧k^2/2−k/2−klogk

              =k^2/2(1−1/k−2logk/k)

kが大きいときlog(2^(kC2)/k!)はk^2/2とほぼ同じ振る舞いをすることがわかる(この相対誤差はk→∞のとき0に収束する).すなわち,k頂点の同型でないグラフの総数はexp(k^2)のオーダーで増加し,たとえば2^kよりもずっと大きいことがわかる.また,2^(kC2)に較べそれほどゆっくり増加するわけでもないこともわかるだろう.

 これは漸近評価であるが,グラフの正確で実用的な数え上げに関しては,ポリアが化学者から高分子の異性体がいくつあるかを求めることを依頼されて,有名なポリアの数え上げ理論を発見している.ここではポリアの定理の詳細については記さないが,置換群によってもたらされる同値類の個数(バーンサイドの定理)に基づいて数え上げを行うものである.

 群の概念は,代数方程式の解の置換の研究として誕生した歴史をもつが,今日では自然科学の多くの分野に応用され,たとえば,化学における分子構造やタンパク質やDNAの配列の決定に関しても,群論が重要な役割を果たしていることはご存知であろう.

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