■ケーリーの公式(その2)

【1】はしがき

 まず最初に高校の化学の授業を思い出してもらいたい.炭化水素の中で単結合のみで構成されている飽和炭化水素(アルカン,パラフィン系)は分子式CkH2k+2をもつ.炭素原子Cの原子値は4,水素原子Hの原子値は1である.

    H       H H       H H H

    |       | |       | | |

  H−C−H   H−C−C−H   H−C−C−C−H

    |       | |       | | |

    H       H H       H H H

メタン,エタン,プロパンのCを・(頂点),C−C結合を−(辺)で表すことにすると,それぞれ

    ・       ・−・       ・−・−・

のようにグラフで表現できる.

 ブタン,ペンタン,ヘキサンは

  ・−・−・−・  ・−・−・−・−・   ・−・−・−・−・−・

となるが,それぞれに構造異性体があり,

(k=4)

    ・

  ・−・−・

(k=5)

      ・       ・

      |       |

  ・−・−・−・   ・−・−・

              |

              ・

(k=6)

        ・        ・        ・

        |        |        |

  ・−・−・−・−・  ・−・−・−・−・  ・−・−・−・

                          |

                          ・

    ・ ・

    | |

  ・−・−・−・

 すなわち,

  位数  :1,2,3,4,5,6,7, 8, 9,10, 11, 12, 13,・・・,k,・・・

  異性体数:1,1,1,2,3,5,9,18,35,75,159,357,799,・・・,f(k),・・・

となる.

 ところが,異性体数f(k)の一般的なkに対する数え上げ公式はないという話を聞いて驚かされた.その数を完全に決定することは簡単ではないにしてもそれなりの漸近評価を与えることはできるだろうと思ったのだが,訊ねてみたところ,どれくらいのオーダーで増えるのかという漸近公式もわからないという.この辺の事情について考えてみることにした.

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