■奇数ゼータと杉岡の公式(その5)

 杉岡幹生氏は,その後,公式
  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2
  (π/2-x)^2=Σcos(2nx)/n^2+π^2/12
の右辺が左辺のフーリエ展開となっていることに着目して,新しいゼータ公式を導くのに利用できそうなフーリエ級数型の公式をHP上にいくつか掲げておられます.もちろん,その中にはロバチェフスキー関数なども含まれています.
 
 今回のコラムでは,それらの公式とは別に(その3)で遣り残した宿題
  xlogx-2πΣζ(2n)/2n・(x/π)^(2n+1)=-Σxcos(2nx)/n-xlog2
を出発点にして,それからlogπを消去した4^(2n)型公式を導こうと考えました.
 
 4^(2n)型公式とは,
  ζ(3)=-4π^2/7・Σζ(2n)/(2n+1)(2n+2)2^2n
  ζ(5)=4π^2/31ζ(3)+8π^4/31・Σζ(2n)/(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)2^2n
  ζ(7)=-8π^4/1143ζ(3)+64π^2/381ζ(5)-64π^6/381・Σζ(2n)/(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)2^2n
のような形の公式で,分母が2^(2n)ではなく,4^(2n)に変わったものです.
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【1】杉岡の公式(その2の再考)
 
  xlogx-2πΣζ(2n)/2n・(x/π)^(2n+1)=-Σxcos(2nx)/n-xlog2
を(0回積分)としましょう.すると(1回積分)は
  x^2logx/2-x^2/4-2π^2Σζ(2n)/2n(2n+2)・(x/π)^(2n+2)=-Σxsin2nx/2n^2-Σ(cos2nx-1)/4n^3-x^2log2/2
となります.
 
 以下同様に,
(2回積分)
  x^3logx/6-53x^3/36-2π^3Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)・(x/π)^(2n+3)=Σxcos2nx/4n^3-Σsin2nx/4n^4+ζ(3)x/4-x^3log6/2
(3回積分)
  x^4logx/24-13x^3/288-2π^4Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)・(x/π)^(2n+4)=Σxsin2nx/8n^4+Σ3(cos2nx-1)/16n^5-ζ(3)x^2/8-x^4log2/24
(4回積分)
  x^5logx/120-77x^5/7200-2π^5Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)・(x/π)^(2n+5)=Σxcos2nx/16n^5+Σsin2nx/8n^6-3ζ(5)x/16-ζ(3)x^3/24-x^5log2/120
(5回積分)
  x^6logx/720-29x^6/14400-2π^6Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)・(x/π)^(2n+6)=Σxsin2nx/32n^6-Σ5(cos2nx-1)/64n^7+3ζ(5)x^2/32-ζ(3)x^4/96-x^6log2/720
 
 それぞれにx=π/2,x=π/4を代入します.まず,(0回積分)にx=π/2を代入すると
  Σζ(2n)/2n・2^2n=1/2・logπ-1/2・log2
x=π/4を代入すると
  Σζ(2n)/2n・4^2n=1/2・logπ-3/4・log2
 
 (1回積分)にx=π/2を代入したものは(その2)で既出の
  ζ(3)=2π^2/7logπ-π^2/7-8π^2/7・Σζ(2n)/2n(2n+2)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(3)=4π^2/35log(π/2)-2π^2/35-16π^2/35・Σζ(2n)/2n(2n+2)2^4n+16π/35・L(2)
 
 (2回積分)にx=π/2を代入すると
  ζ(3)=2π^2/3logπ-5π^2/9-8π^2・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(3)=4π^2/87log(π/2)-10π^2/261-16π^2/29・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)4^2n+128/29π・L(4)
 
 (3回積分)にx=π/2を代入したものは(その2)で既出の
  ζ(5)=-2π^4/279logπ+13π^4/1674+8π^2/93ζ(3)+32π^4/93・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(5)=-4π^4/4743log(π/2)+13π^4/14229+64π^2/1581ζ(3)+64π^4/1581・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)4^2n+256π/1581・L(4)
 
 (4回積分)にx=π/2を代入すると
  ζ(5)=-2π^4/495logπ+7π^4/1350+8π^2/99ζ(3)+32π^4/33・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(5)=-4π^4/22815log(π/2)+77π^4/342225+64π^2/4563ζ(3)+64π^4/1521・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)4^2n+4096/1521π・L(6)
 
 (5回積分)にx=π/2を代入したものは(その2)で既出の
  ζ(7)=-28π^6/57150logπ-116π^6/571500-8π^4/1905ζ(3)+96π^2/635ζ(5)-128π^6/635・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(7)=8π^6/1857375log(π/2)-232π^6/37147500-64π^4/123825ζ(3)+3072π^2/41275ζ(5)-256π^6/41275・Σζ(2n)/2n(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)4^2n+4096π/41275・L(6)
 
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【2】まとめ
 
 整理してみると
         x=π/2          x=π/4
 (0回積分)  ζ(2n)          ζ(2n)
 (1回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n),L(2)
 (2回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n),L(4)
 (3回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n),L(4)
 (4回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n),L(6)
 (5回積分)  ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n) ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n),L(6)
の関係式が得られたことになります.
 
  x=π/4を代入した式は分母が4^2nとなるので収束は速いのですが,
  xlogx-2πΣζ(2n)/2n・(x/π)^(2n+1)=-Σxcos(2nx)/n-xlog2
を出発点とした4^(2n)型公式では,2^(2n)型公式とは違って,どうしても偶数Lが出現してしまいます.
 
 (その3)で計算した
  logx-2Σζ(2n)/2n・(x/π)^(2n)=-Σcos(2nx)/n-log2
を出発点とする4^(2n)型公式
         x=π/2          x=π/4
 (0回積分)  ζ(2n)          ζ(2n)
 (1回積分)  ζ(2n)          ζ(2n),L(2)
 (2回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n)
 (3回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n),L(4)
 (4回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n)
 (5回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n),L(6)
 (6回積分)  ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n) ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n)
の場合と比較してみて下さい.2回積分,4回積分,6回積分にはL(2n)が出現しない点が異なっているでしょう.
 
 これで所期の目的は断念せざるを得なくなったのですが,このことから
  L(2n)も偶数ゼータの無限和で表される
ことがわかりました.奇数ゼータと同じことになったのですが,杉岡氏のご指摘の如く,これはこれで面白い結果と考えられます.
 
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