■奇数ゼータと杉岡の公式(その3)

 今回のコラムでは「杉岡の公式」のその後についてお知らせします.つい最近,杉岡氏は負の奇数ゼータ
  ζ(−1)=−1/12
  ζ(−3)=1/120
  ζ(−5)=−1/252
  ζ(−7)=1/240
  ζ(−9)=−1/132
  ζ(−11)=691/32760
  ζ(−13)=−1/12
  ・・・・・・・・・・・・・・・・
  ζ(1−2n)=−B2n/2n
を求める初等的な方法を見出しておられます.
 
 正の奇数ゼータの場合,
  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2
の両辺を(0,x)で積分して,2回積分するごとにx=π/2を代入するというものでしたが,2回微分するごとにx=π/2を代入すると,負の奇数ゼータ
  ζ(−1)=−1/12
  ζ(−3)=1/120
が次々に求まるのです.
 
 早速試してみたいのですが,計算の都合上,まず基礎的なところを整理しておきたいと思います.
 
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【1】ゼータ関数とL関数
 
 ゼータ関数は,オイラーの無限級数をsの関数とみるとき,
  ζ(s)=Σ1/n^s
     =1/1^s+1/2^s+1/3^s+1/4^s+・・・
として定義される関数です.すなわち,ゼータ関数は調和級数
  H∞ =1/1+1/2+1/3+1/4+・・・
を一般化したものと考えることができます.
 
 ゼータ関数を用いると
  ζ(2)=1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
  ζ(4)=1/1^4+1/2^4+1/3^4+1/4^4+・・・=π^4/90
  ζ(6)=1/1^6+1/2^6+1/3^6+1/4^6+・・・=π^6/945
と表されます.
 
 オイラーはπに関連したいろいろな級数展開式をどっさり発見していて,
+,−が交互に出現すると
  1/1^2−1/2^2+1/3^2−1/4^2+・・・=π^2/12
  1/1^4−1/2^4+1/3^4−1/4^4+・・・=7π^4/720
  一般式:(1-2^1ーs)ζ(s)
 
 分母を奇数の偶数ベキ乗だけにすると
  1/1^2+1/3^2+1/5^2+1/7^2+・・・=π^2/8
  1/1^4+1/3^4+1/5^4+1/7^4+・・・=π^4/96
  一般式:(1-2^ーs)ζ(s)
 
分母を奇数の奇数ベキ乗だけにし,さらに交代級数にすると
  1/1^3−1/3^3+1/5^3−1/7^3+・・・=π^3/32
  1/1^5−1/3^5+1/5^5−1/7^5+・・・=5π^5/1536
などもオイラーによるものであり,ここで紹介したものはごく一部にすぎません.
 
 これらのなかで
  1/1^2+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・=π^2/6
  1/1^2−1/2^2+1/3^2−1/4^2+・・・=π^2/12
  1/1^2+1/3^2+1/5^2+1/7^2+・・・=π^2/8
の3系列は有名なベルヌーイ数と関係していますが,
  1/1^3−1/3^3+1/5^3−1/7^3+・・・=π^3/32
の系列はオイラー数が重要な役割を果たしています.
 
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 ベルヌーイ数列{Bn}の指数型母関数は
  x/(e^x−1)
で与えられます.すなわち,ベルヌーイ数は
  x/(e^x−1)=ΣBnx^n/n!
 =B0/0!+B1/1!x+B2/2!x^2+B3/3!x^3+・・・
で定義される有理数で,係数Bnはベルヌーイ数と呼ばれます.容易にわかるように
  x/(e^x−1)→1   (x→0)
が成立します.
 
 具体的に係数Bnを求めてみましょう.定義より,ベルヌーイ級数はべき級数  (e^x−1)/x=1+1/2!x+1/3!x^2+1/4!x^3+・・・
の反転級数と考えることができます.
  e^x=1+1/1!x+1/2!x^2+・・・
ですから
  x/(e^x−1)
 =x/(x+x^2/2!+x^3/3!+・・・)
 =1/(1+x/2!+x^2/3!+・・・)
 =1-(1+x/2!+x^2/3!+・・・)+(1+x/2!+x^2/3!+・・・)^2-・・・
 =1-1/2x+1/6x^2-1/30x^4+・・・
 
 これより,B0=1,B1 =−1/2で
  x/(e^x−1)−B1/1!x=x/2・(e^x+1)/(e^x−1)
は偶関数ですから,奇数項は第一項以外は0で,偶数項は
  B2=1/6,B4=−1/30,B6=1/42,B8=−1/30,
  B10=5/66,B12=−691/2730,B14=7/6,
  B16=−3617/510,B18=43867/798
であとは分子が急速に大きくなり,たとえば,
  B32=−7709321041217/510,
  B34=2577687858367/6
です.分母は必ず6で割り切れます.
 
 ベルヌーイ数については,再帰公式
  (B+1)^n-B^n=0
が成り立ちます.ただし,2項展開してからB^nをBnで置き換えることにします.
 
 また,ベルヌーイ数と似たものにオイラー数やタンジェント数があります.オイラー数は
  sechx=ΣEn/n!x^n
 =E0/0!+E2/2!x^2+E4/4!x^4+・・・
で,べき級数
  coshx=1+1/2!x^2+1/4!x^4+1/6!x^6+・・・
の反転級数として定義されます.
 
 オイラー数では,再帰公式
  (E+1)^n-(E−1)^n=0
が成り立ちます.
  E0=1,E2=-1,E4=5,E6=-61,E8=1385,E10=-50521,・・・
  E1=E3=E5=・・・=0
 
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 L関数は
  L(s)=1/1^s−1/3^s+1/5^s−1/7^s+・・・
で定義される関数なのですが,L関数において
  L(2n+1)=(-1)^n|E2n|/2^(2n+2)(2n)!π^(2n+1)
  L(2n)=(-1)^nπ^2n/4(2n-1)!∫(0,1)E2n-1(x)sec(πx)dx
  L(−n)=1/2En(解析接続)
が成り立ちます.
 
 奇数Lの有理数部分にはオイラー数Enが重要な役割を果たしている,それに対して,偶数Lの取り扱いは難しいのですが,正の奇数Lの値を調べることは,負の偶数Lの値を調べることと本質的に同じであるというわけです.
 
 なお,
  L(1)=1/1−1/3+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・
は,グレゴリー・ライプニッツ級数(1671年)と呼ばれます.
 
  1/(1+x)=1−x+x^2−x^3+・・・
これを項別積分すると
  log(1+x)=x−1/2x^2+1/3x^3−1/4x^4+・・・
が得られます.ここで,xをx^2に置き換えると
  1/(1+x^2)=1−x^2+x^4−x^6+・・・
これを項別積分して
  arctanx=x−1/3x^3+1/5x^5−1/7x^7+・・・
両辺にx=1を代入すると,グレゴリー・ライプニッツ級数は
 arctan-1=π/4
すなわち,π/4に収束することがわかります.
  L(1)=Σ(-1)^(n-1)/(2n+1)=π/4=arctan1
 
 また,
  L(2)=1/1^2−1/3^2+1/5^2−1/7^2+・・・
      =1/2∫(0,π/2)θ/sinθdθ=0.91596・・・
はカタランの定数として知られるもので,第1種完全楕円積分
  K(k)=∫(0,π/2)dθ/√(1-k^2sin^2θ)   (ルジャンドルの標準形)
として
  2∫(0,1)K(k)dk
に等しくなります.
 
 第1種完全楕円積分で,z=sinθと変換すると
  K(k)=∫(0,1)1/√{(1-x^2)(1-k^2x^2)}dx   (ヤコビの標準形)
z=sin^2θ,λ=k2とおけば
  K(k)=∫(0,z)dz/√(z(1-z)(1-λz))   (リーマンの標準形)
が成立します.
 
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【2】負の奇数ゼータと偶数L
 
 (1回微分) cotx=2Σsin2nx
 (2回微分) -cosec^2x=4Σncos2nx
 (3回微分) 2cosx/sin^3x=-8Σn^2sin2nx
 (4回微分) -2(3-2sin^2x)/sin^4x=-16Σn^3cos2nx
 
 (2回微分)の式にx=π/2を代入すると,
  -1=-4(1-2+3-4+・・・)
となるのですが,
  1/1^s−1/2^s+1/3^s−1/4^s+・・・=(1-2^1ーs)ζ(s)
より,
  1-2+3-4+・・・=(1-2^2)ζ(-1)
 
 したがって,-1=12ζ(-1)より,
  ζ(−1)=−1/12
 
 次に(4回微分)の式にx=π/2を代入すると,
  -2=16(1^3-2^3+3^3-4^3+・・・)
  1^3-2^3+3^3-4^3+・・・=(1-2^4)ζ(-3)
  -2=-16・15ζ(-3)
となって,
  ζ(−3)=1/120
が求まります.
 
 そういうふうに「解析接続」されているといってしまえばそれまでですが,”微分”で負の奇数ゼータが出てくるなんて驚きでしょう.
 
 ちなみに,元の式(0回微分)
  log(sinx)=-Σcos(2nx)/n-log2
にx=π/2を代入すると,
  log2=1/1−1/2+1/3−1/4+1/5−1/6+・・・
が得られます.
 
  1/1−1/2+1/3−1/4+1/5−1/6+・・・
は調和級数の交代級数で,この値は対数関数のマクローリン展開
  log(1+x)=x−1/2x^2+1/3x^3−1/4x^4+・・・
によりlog2に収束することがわかります.
  Σ(-1)^(n-1)・1/n =log2
はメルカトールの定数とかグレゴリーの定数と呼ばれます.
 
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 引き続いて,(1回微分),(3回微分)の式を用いてみます.(1回微分)の式にx=π/2を代入すると0=0となってしまい,これでは面白味がないので,x=π/4を代入します.すると,
  1=2(1-1+1-1+・・・)
より
  L(0)=1-1+1-1+・・・=1/2
 
 無限級数:Σ(−1)^k=1−1+1−1+1−1+・・・
は奇数番目まで足して1,偶数番目まで足して0になります.0と1の中間で1/2というわけではありませんが,実際に,平均的処理としてこのような極限(チェザロ極限という)が有効なこともあります.
  1−1+1−1+1−1+・・・=1/2
 
 また,
  f(x)=1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1−x)
でxを−1に近づけたときの極限値と考えると1/2になってしまい,整数の和が分数という不思議な結果になります.
 
 (3回微分)の式にx=π/4を代入すると,
  4=-8(1^2-3^3+5^2-7^2+・・・)
すなわち,
  L(−2)=−1/2
ですが,これは前述した
  L(−2)=1/2E2=-1/2
の結果に一致します.
 
 まとめると,以下のようになります.
 
         x=π/2          x=π/4
 (0回微分)  log2=1-1/2+1/3-1/4+・・・  log2=1-1/2+1/3-1/4+・・・
 (1回微分)  0=0            L(0)=1/2
 (2回微分)  ζ(-1)=-1/12       ζ(-1)=-1/12
 (3回微分)  0=0            L(-2)=-1/2
 (4回微分)  ζ(-3)=1/120       ζ(-3)=1/120
 
 このように,負の奇数ゼータと偶数Lが交互に出現しますから,x=π/2よりもx=π/4を代入した方が面白いかもしれません.
 
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【3】杉岡の公式(再考)
 
  logx-2Σζ(2n)/2n・(x/π)^(2n)=-Σcos(2nx)/n-log2
を(0回積分)としましょう.すると(1回積分)は
  xlogx-x-2πΣζ(2n)/2n(2n+1)・(x/π)^(2n+1)=-Σsin2nx/2n^2-xlog2
となります.
 
 以下同様に,
(2回積分)
  x^2logx/2-3x^2/4-2π^2Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)・(x/π)^(2n+2)=Σ(cos2nx-1)/4n^3-x^2log2/2
(3回積分)
  x^3logx/6-11x^3/36-2π^3Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)・(x/π)^(2n+3)=Σsin2nx/8n^4-ζ(3)x/4-x^3log2/6
(4回積分)
  x^4logx/24-25x^4/288-2π^4Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)・(x/π)^(2n+4)=-Σ(cos2nx-1)/16n^5-ζ(3)x^2/8-x^4log2/24
(5回積分)
  x^5logx/120-137x^5/7200-2π^5Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)・(x/π)^(2n+5)=-Σsin2nx/32n^6+ζ(5)x/16-ζ(3)x^3/24-x^5log2/120
(6回積分)
  x^6logx/720-49x^6/14400-2π^6Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)・(x/π)^(2n+6)=Σ(cos2nx-1)/64n^7+ζ(5)x^2/32-ζ(3)x^4/96-x^6log2/720
 
 それぞれにx=π/2,x=π/4を代入します.まず,(0回積分)にx=π/2を代入すると
  Σζ(2n)/2n・2^2n=1/2・logπ-1/2・log2
x=π/4を代入すると
  Σζ(2n)/2n・4^2n=1/2・logπ-3/4・log2
 
 (1回積分)にx=π/2を代入すると
  Σζ(2n)/2n(2n+1)・2^2n=1/2・logπ-1/2
x=π/4を代入すると
  Σζ(2n)/2n(2n+1)・4^2n=1/2・logπ-1/2・log2-1/2+1/π・L(2)
 
 (2回積分)にx=π/2を代入したものは(その1)で既出の
  ζ(3)=-2π^2/7logπ+3π^2/7+8π^2/7・Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(3)=-4π^2/35log(π/2)+6π^2/35+16π^2/35・Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)4^2n
 
 (3回積分)にx=π/2を代入すると
  ζ(3)=-π^2/6logπ+11π^2/36+2π^2Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(3)=-π^2/24log(π/2)+11π^2/144+π^2/2Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)4^2n+2/π・L(4)
 
 (4回積分)にx=π/2を代入したものは(その1)で既出の
  ζ(5)=2π^4/93logπ-25π^4/558+8π^2/31ζ(3)-32π^4/31・Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(5)=4π^4/1581log(π/2)-25π^4/4743+64π^2/527ζ(3)-64π^4/527・Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)4^2n
 
 (5回積分)にx=π/2を代入すると
  ζ(5)=π^4/120logπ-137π^4/7200+π^2/6ζ(3)-2π^4Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(5)=π^4/1920log(/2)-137π^4/115200+π^2/24ζ(3)-π^4/8Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)4^2n+2/π・L(6)
 
 (6回積分)にx=π/2を代入したものは(その1)で既出の
  ζ(7)=-4π^6/5715logπ+49π^6/28575-8π^4/381ζ(3)+32π^2/127ζ(5)+128π^6/127・Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)2^2n
x=π/4を代入すると
  ζ(7)=-8π^6/371475log(π/2)+98π^6/1857375-64π^4/24765ζ(3)+1024π^2/8255ζ(5)+256π^6/8255Σζ(2n)/2n(2n+1)(2n+2)(2n+3)(2n+4)(2n+5)(2n+6)4^2n
 
 整理してみると
         x=π/2          x=π/4
 (0回積分)  ζ(2n)          ζ(2n)
 (1回積分)  ζ(2n)          ζ(2n),L(2)
 (2回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n)
 (3回積分)  ζ(3),ζ(2n)       ζ(3),ζ(2n),L(4)
 (4回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n)
 (5回積分)  ζ(5),ζ(3),ζ(2n)    ζ(5),ζ(3),ζ(2n),L(6)
 (6回積分)  ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n) ζ(7),ζ(5),ζ(3),ζ(2n)
の関係式が得られたことになります.x=π/4を代入した式は分母が4^2nとなるので収束は速いはずです.
 
[注]これらの数式は,小生が数式処理ソフトを用いずに手計算で求めたものであり,信頼率は低い(50%以下?)と思われた.そこで,杉岡氏に検算をして頂きました.
 
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【4】偶数ゼータと奇数L
 
 引き続いて(その2)のように両辺にxをかけた
  xlogx-2πΣζ(2n)/2n・(x/π)^(2n+1)=-Σxcos(2nx)/n-xlog2
一般には
  x^mlogx-2π^mΣζ(2n)/2n・(x/π)^(2n+m)=-Σx^mcos(2nx)/n-x^mlog2
を出発点にして,logπを消去することが考えられます.
 
 しかし,ここでは,
  コラム「無限次元空間の球充填問題(その6)」
で紹介した
  Σcos(2nx)/n^2=(π/2-x)^2-π^2/12
からスタートすることにします.もちろん,その目的は偶数ゼータの値を明示的に求めることにあります.
 
 (0回積分) Σcos(2nx)/n^2=(π/2-x)^2-π^2/12
 (1回積分) Σsin(2nx)/2n^3=x^3/3-πx^2/2+π^2x/6
 (2回積分) -Σcos(2nx)/4n^4+ζ(4)/4=x^4/12-πx^3/6+π^2x^2/12
 (3回積分) -Σsin(2nx)/8n^5+ζ(4)x/4=x^5/60-πx^4/24+π^2x^3/36
 (4回積分) Σcos(2nx)/16n^6-ζ(6)/16+ζ(4)x^2/8=x^6/360-πx^5/120+π^2x^4/144
 (5回積分) -Σsin(2nx)/8n^5+ζ(4)x/4=x^5/60-πx^4/24+π^2x^3/36
 (6回積分) Σcos(2nx)/16n^6-ζ(6)/16+ζ(4)x^2/8=x^6/360-πx^5/120+π^2x^4/144
 
         x=π/2          x=π/4
 (0回積分)  ζ(2)=π^2/6       ζ(2)=π^2/6
 (1回積分)  0=0            L(3)=π^3/32
 (2回積分)  ζ(4)=π^4/90       ζ(4)=π^4/90
 (3回積分)  ζ(4)=π^4/90       L(5)=5π^5/1536
 (4回積分)  ζ(6)=π^6/945      ζ(6)=π^6/945
 (5回積分)  ζ(4)=π^4/90       L(5)=5π^5/1536
 (6回積分)  ζ(6)=π^6/945      ζ(6)=π^6/945
 
 このように,偶数ゼータと奇数Lの系列が得られます.
 
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【5】負の偶数ゼータと奇数L
 
 今度は逆に微分してみましょう.
 
 (0回微分) Σcos(2nx)/n^2=(π/2-x)^2-π^2/12
 (1回微分) -Σ2sin(2nx)/n=2x-π
 (2回微分) -Σ4cos(2nx)=2
 (3回微分) Σ8nsin(2nx)=0
 (4回微分) Σ16n^2cos(2nx)=0
 (5回微分) -Σ32n^3sin(2nx)=0
 (6回微分) -Σ64n^4cos(2nx)=0
3回微分以降,右辺はすべて0になります.
 
 そして,まとめると
         x=π/2          x=π/4
 (0回微分)  ζ(2)=π^2/6       ζ(2)=π^2/6
 (1回微分)  0=0            L(1)=π/4
 (2回微分)  L(0)=1/2         L(0)=1/2
 (3回微分)  0=0            L(-1)=0
 (4回微分)  ζ(-2)=0          ζ(-2)=0
 (5回微分)  0=0            L(-3)=0
 (6回微分)  ζ(-4)=0          ζ(-4)=0
 
 交互に負の偶数ゼータと奇数Lが現れ,いずれも0となります.そして,ここにも「多重積分←→多重微分」の法則性が潜んでいたというわけです.
 
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 なお,
  Σcos2nx/n^2=(π/2−x)^2−π^2/12
以外の基本等式として
  Σy^ncos2nx/n=−1/2log(1−2ycos2x+y^2)
  Σy^nsin2nx/n=arctan((1+y)/(1−y)tanx)−x
も知られています.
 
  Σy^ncos2nx/n=−1/2log(1−2ycos2x+y^2)
にy=1を代入すると,オイラーが得た結果
  Σcos2nx/n=−log(sinx)−log2
 
  Σy^nsin2nx/n=arctan((1+y)/(1−y)tanx)−x
にy=−1を代入すると,ロバチェフスキー関数
  1/2Σsin2nx/n=−∫(0,x)log(2cosx)dx
−log2
が得られ,
  L(π/2)=π/2log2
の値が求められます.
 
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