■面正則多面体の展開図とシェパードの定理(その2)

 ジョンソン・ザルガラー立体のうち,5個のデルタ多面体とJ14,J15,J16,J1,J86はタイル貼り可能であることが確認されています.一様タイルからは5個のデルタ多面体とJ14,J15,J16,非一様タイルからはJ1,J86がタイルになることが導き出されます.

 J14,J15,J16,J1,J86はいずれも正三角形と正方形でできるジョンソン立体ですが,ジョンソン立体で正三角形と正方形でできるものは全部で23種類あります.これらはデルタ多面体に次いで単純なわけですが,今回のコラムではJ14,J15,J16,J1,J86以外に展開図が平面充填可能となる正三角形と正方形でできるジョンソン立体が存在するかどうか検討してみることにしたいと思います.

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【1】非一様タイル(二様タイル?)

 正三角形と正方形が2種類の頂点周りの状態を示しながら集まるタイル貼りを考えます.正三角形と正方形でできるタイル貼りには本質的に異なる並べ方が2種類あり,平行対称性だけをもつものをT型,回転対称性(あるいは鏡映対称性)ももつものをR型とします.

[1]T型

 T型には1列の正方形の帯の両側に2列の正三角形の帯があるもの,1列の正方形の帯の両側に3列の正三角形の帯があるもの,1列の正方形の帯の両側にn+1列の正三角形の帯があるものなどがあり,それぞれ三角形:正方形比が4:1のもの,6:1のもの,8:1のもの,2n:1のものなどがタイルになるための必要条件を満たします.J85は12:1ですが,正方形が辺で連結していないのでNGです.

  4:1→J1

  6:1→J86,J89

  8:1→J88

  10:1→J50

  12:1→J10

  16:1→J87

 実際,J1(3^44^1),J86(3^124^2)はタイルになることが確かめられていますが,J50,J87,J88,J89は実際に模型で確かめたわけではありません.

 また,T型には1列の正三角形の帯の両側に2列の正方形の帯があるもの,1列の正三角形の帯の両側に3列の正方形の帯があるもの,1列の正三角形の帯の両側にn列の正方形の帯があるものなどがあり,それぞれ三角形:正方形比が2:2のもの,2:3のもの,2:4のもの,2:nのものなどがタイルになるための必要条件を満たします.J26は2:2ですが,正方形が辺で連結していないのでNGです.

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[2]R型

 T型ではすべての正方形が辺で連結していましたが,R型は辺で連結していない正方形があります.

 それにはアルキメデスの平面充填形(34^26)(基本領域は正三角形:正方形:正六角形=2:3:1)の正六角形を正三角形6個で置き換えたもの(正三角形:正方形=8:3)やアルキメデスの平面充填形(312^2)(基本領域は正三角形:正十二角形=2:1)の正十二角形を正三角形12個,正方形6個で置き換えたもの(正三角形:正方形=14:6),アルキメデスの平面充填形(4612)(基本領域は正方形:正六角形:正十二角形=3:2:1)の正六角形を正三角形6個で,正十二角形を正三角形12個,正方形6個で置き換えたもの(正三角形:正方形=24:9)などがあります.

 これらの正方形はすべて単独で他の正方形と頂点で連結していますが,J85,J26を含め,この基本領域に一致するジョンソン立体は存在しません.

 また,辺で繋がった正方形2個が1個の正方形と頂点で連結しているもの(正三角形:正方形=6:3)や辺で繋がった正方形2個同士が頂点で連結しているもの(正三角形:正方形=4:2)はアルキメデスの平面充填形(3^34^2)と同じ基本領域(正三角形:正方形=2:1)であって,この基本領域に一致するジョンソン立体は存在しません.

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【2】まとめ

 かくしてJ10,J50,J87,J88,J89が本当にタイル貼り可能であるかどうかは実際に模型で確かめなければなりませんし,確かめてはじめてわかることなのです.

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