■相転移モデル(その4)

 多くの人は,貝殻を拾い上げてその着色パターンに驚嘆した覚えがあろう.それぞれが独特の美しさをたたえているが,そのパターン形成の仕組みはわかっていない.まるで科学者に対して挑んでいるかのように思える問題である.

 チューリングは数理生物学の基礎を形作ったひとりでもある.トラやシマウマの毛皮の独特の模様が形成される過程を数学的に説明することに成功した.

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【1】1952年

 1952年,拡散方程式に関する2つの画期的な論文が世に出た.1つはホジキン・ハクスリーによる神経パルスが減衰せずに伝播するモデルに関する論文で,1963年にノーベル賞を受賞した.

 もうひとつの論文はチューリングが発表した「形態形成の化学的基礎」という論文で,その後の学問研究に大きな影響を与えることになった.

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【2】チューリング

 チューリングは英国の数学者で,コンピュータ科学や人工知能の父とも呼ばれている.第2次大戦中はドイツ軍の暗号エニグマの解読で中心的な役割を果たしたことでも知られている.

 1950年頃からは数理生物学とくに形態形成に関する研究を行い,拡散誘導不安定の概念を用いて,形態形成メカニズムを説明した.当初はあまり注目されなかったが,その後の学問研究に大きな影響を与えることになったのである.

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