■詐欺デルタ多面体

 正三角形面からなる多面体は無限にあるが,そのうち8つだけが凸である.  f=4,6,8,10,12,14,16,20

f=18の凸デルタ多面体がないのは謎であるが,凸体に近いものの凸でないデルタ18面体は存在する.それは「詐欺多面体」と名付けられている.同じf=18を2つの方向から見た写真を掲げる.

 f=18の凸デルタ多面体がなぜ存在しないかを証明するのはそれほど易しくない.実際,凸デルタ多面体が8個しかないことの証明は,1947年,ファン・デル・ヴェルデンとフロイデンタールまでなされなかった.

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【1】f=18の謎

 f=18(v=11)が十分条件を満たさないことはどのようにして証明されるのでしょうか? この点について一松信先生にうかがったのですが,この証明は殊の外厄介ということでした.それは凸多面体という条件がつくためなのですが,結局は頂点数11の形を分類してどのような組でも凸体にならないことを確かめるという手間を要します.

 f=18の不可能性の証明は端的にいって「あらゆる可能性を調べて凸体にならない」ことを示すような厄介な話です.オイラーの士官36人の問題の不可能性の証明などもその1例です.→コラム「群と魔方陣」

 6次のラテン方陣は存在するのに対して,6次のグレコ・ラテン方陣は不可能であることが証明されています.その証明はタリー(1903年)によってなされたのですが,全数を列挙して調べつくすというものでした.

 6次のアフィン平面は存在しないので,直交するラテン方陣が一組も存在しませんという言明は正しくなく,その証明はしらみつぶしの方法によるしかないのです.すなわち,いまだ一般的・理論的な証明はなく,不可能性の証明は根気のいるしらみつぶしによる方法によらざるをえないというわけです.(もちろん,もう少し数学的に考察して場合の数を減らし,抜けがないことを確かめる技法が要りますが・・・)

 一松先生のお手紙によりますと,どうやらf=18の不可能性を自分で考えることは難しそうですから,あとで調べてみて証明法がわかった時点で解決編を載せたいと考えています.

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【2】f=8

 f=8には位相的に相異なる2種のデルタ多面体があることを知って驚く方もあるだろう.ひとつはお馴染みの正八面体であるが,もうひとつの写真を掲げる.

 正八面体では各頂点に4本の辺が会するが,この凸でない立体では2つの頂点には3本,2つの頂点には4本,2つの頂点には5本の辺が会する.凹多面体も許せば,デルタ多面体は8以上の任意の面数をとりえるのである.

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【3】f=12

 角錐の間に正三角形からなる帯をつけて,角錐の傘で上下からフタをすることを考えます.6個の正三角形からなる三角反柱の帯に正三角錐でフタをすると,デルタ12面体ができそうですですが,実際には,正八面体と正四面体の二面角は互いに補角ですから平行六面体となってしまいます.平デルタ多面体ですが,凸デルタ多面体とはなりません.

 なお,凸デルタ12面体は双子の正十二面体とも呼ばれています.

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 「ポリドロン」によるデルタ多面体の構成では

  佐藤一麦(中学1年生)

  佐藤千種(幼稚園)

の協力を得ました.また,「ポリドロン」は東京書籍がその取り扱い店となっています.

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