■2次元結晶群(その11)

【6】ムーンシャイン現象

 次の目標は周期律表に載っていないこれ以外の例外型単純群は存在しないことを証明することであったが,モンスター群が最大の例外型単純群であることがわかったと同時に信じられない驚きが待っていた.有限単純群の分類の完成は,ムーンシャイン予想という予期せぬものを生み出したのである.

 マッカイにより,モンスター群(196883次元)はj関数の級数展開

  j(q)=1/q+744+196884q+21493760q^2+864299970q^3+20245856256q^4+・・・

の1つ違いの係数196884と関係していることがわかった.コンウェイはこの不可解な現象を論理的な理由のわからない,意味のはっきりしないものという趣旨を込めて,モンスターと数論の結びつきをムーンシャインと呼んだ.

 オッグは双曲平面に作用し巻き込んで球面にするモジュラー群に対応する素数は2・3・5・7・11・13・17・19・23・29・21・41・47・59・71だけであることを示した.

 その後,ボーチャーズが現代物理学の弦理論にその原点をもつ頂点作用素代数を用いることによって,これは単なる偶然の一致ではなく,そこに何か真実が隠されていることをつきとめる.これによりモンスター群と数論との明瞭な関係が実証されたことになる.

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