コラム「双子の正十六面体は変形するか?」において,ゴールドバーグは論文
Goldberg, M: Unstable polyhedral structures, Mathematics Magazine, May, 1978
の中で双子の正二十面体の場合しか述べていないと書いたが,それは双子の正十二面体,正十六面体の場合が述べられていないという意味であって,他の変形する多面体についてはちゃんと言及されている.
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【1】Jessenの直交20面体
正二十面体のx,y,z軸方向を向く辺に隣接する2枚の正三角形面を合計6組取り除き,その穴を2枚の鈍角二等辺三角形(頂角108°)でふさぐ.この2枚の二等辺三角形の二面角は116.565°,正三角形との間の二面角は100.812°となる.こうしてできた多面体がJessenの直交20面体で,動く多面体のひとつとしてよく知られている.
その図をみると,2枚の鈍角二等辺三角形の連結した辺をちょうつがいのように考えれば,多面体がねじれる様子が眼にうかんでくる.
そこで,この模型を作ろうと考えたのであるが,ポリドロンの二等辺三角形は鈍角でなく「直角」二等辺三角形である.これを使ってできあがった模型は,正確なJessenの直交20面体とまではいかなくてもいくぶん膨らんだ形であればよいと期待したのであるが,以下の写真のような立方八面体となった.これでは微動だにしない・・・
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【2】雑感
「変形する」にはさまざまな意味があり,
[1]微動・無限小振動する
[2]2種類以上の安定した形をとる
[3]連続的に変形する折り曲げ可能多面体
のいずれかである.Jessenの直交20面体は連続して変形するように思えるが,実際は微動する多面体だそうである.
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