■転がる石に苔むさず(その6)

 正方形の車輪のついた自転車でも上下に揺れず安定して走ることができる地面の形状はある.それは懸垂線(カテナリー)と呼ばれる形を直線に沿って何個も並べた形である.カテナリーはひもの両端を固定してぶら下げてできる曲線であって,正方形の車輪のついた自転車の場合,隣り合うアーチが谷で出会ってできる角度は直角になる.

 ちなみに,三角の車輪でも五角の車輪でも地面のなす曲線は懸垂曲線が連なった形である→(その4)参照.一般に正n角形の車輪が回転する場合,地面の方程式は,cを定数として

  y=−bcosh(x/b),b=ccot(π/n)

となる.nが多くなればなるほど車輪の形は円に近づき,地面は平坦になっていく.その際,隣り合うカテナリーが谷で出会ってできる角度は(1−2/n)πになる.

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 次に,谷の角に入った車輪の角の軌跡を考えてみよう.正方形の車輪の場合,2つめの谷の角では最高点に達し,4つめの谷の角に入り再び最低点となる.正n角形の車輪が回転する場合はn番目の角に再び入ることになるが,一見するとサイクロイド(固定した直線上を円が滑らずに転がるとき,回転円上の固定点のなす軌跡)を描くように見える.

 しかし,これは誤解である.カテナリーの伸開線(インボリュート)を考えてみると,それはトラクトリックス(追跡線)であって,トラクトリックスと連ねた曲線というのが正解であろう.

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