■数とあそぶ(その36)

[2]連分数

 mが小さいときは比較的簡単に求まりましたが,ペル方程式の自然数解を求めることはそれほどやさしくはありません.Q(√199)を考えてみると,199=3(mod4)の素数ですが,

  x^2−199y^2=±1

の最小解は

  (16266196520,1153080099)

にもなってしまいます.

 この解を求めるには√199の連分数展開

  √199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]

を用います.9〜28は循環節(周期20)です.

 (その34)で述べたことを標準連分数の場合に書き換えますと,

  α=[q1,・・・,qn]=Pn/Qn

  P0=1,P1=q1,Pn=qnPn-1+Pn-2

  Q0=0,Q1=1 ,Qn=qnQn-1+Qn-2   (n=2,3,・・・)

  PnQn-1−Pn-1Qn=(−1)^n   (n=1,2,・・・)

  PnQn-2−Pn-2Qn=(−1)^n-1qn   (n=2,3,・・・)

が成り立ちます.

 また,

  α=[q1,・・・,qn-1,qn,qn+1,・・・]

の部分列[qn,qn+1,・・・]に対して

  αn=[qn,qn+1,・・・]

なる実数αnを定めると

  α=[q1,・・・,qn-1,αn]

   =(αnPn-1+Pn-2)/(αnQn-1+Qn-2)

が証明されます.

 これに循環連分数になるという性質が加わって,ペル方程式の解が得られるのですが,

  √m=[q1,q2,・・・,qn,2q1]   (周期n)

  αn+1=[2q1,q2,・・・]=√m+q1

より

  √m=((√m+q1)Pn+Pn-1)/((√m+q1)Qn+Qn-1)

 ここで,

  PnQn-1−Pn-1Qn=(−1)^n   (n=1,2,・・・)

より,

  Pn^2−mQn^2=(−1)^n

となり,ペル方程式の解(Pn,Qn)が得られます.

  √199=[14;9,2,1,2,2,5,4,1,1,13,1,1,4,5,2,2,1,2,9,28,・・・]

では,q1=14,q2=9,q3=2,・・・,n=20ですから

P Q

0 1 0

1 14 1

2 127 9

3 268 19

4 396 28

5 1058 75

6 2511 178

7 13613 965

8 56963 4038

9 70576 5003

10 127593 9041

11 1728583 122536

12 1856122 131577

13 3584705 254113

14 16194942 1148029

15 84559415 5994258

16 185313772 13136545

17 455186959 32267348

18 640500731 45403893

19 1736188421 123075134

20 16266196520 1153080099

となって,

  (16266196520,1153080099)

が得られました.

 ペル方程式は√mの連分数展開を用いると非常には求められるのですが,最小解がmと較べて非常に大きい例としては

m        ε                       ノルム

46   24335+3588√46                 +1

94   2143295+221064√94             +1

151  1728148040+140634693√151      +1

193  1764132+126985√193            −1

409  111921796968+5534176685√409   −1

526  84056091546952933775+3665019757324295532√526                     +1

などが知られているようです.

 なお,ペル方程式は,

  x^2−my^2=d(多くは±1,±4)

を扱うものでしたが,

  x^2±my^2=p

を扱うのが類体論です.これについてはコラム「奇数ゼータと杉岡の公式(その13)」をご参照下さい.

  [参]小野孝「数論序説」裳華房

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