■平方和恒等式(その5)

【1】フルヴィッツ・ムーアヘッドの等式

  n{A(a^n)−G(a^n)}

 =1/2(n−1)!{Σ(a1^(n-1)−a2^(n-1))(a1−a2)+Σ(a1^(n-2)−a2^(n-2))(a1−a2)a3+Σ(a1^(n-3)−a2^(n-3))(a1−a2)a3a4+・・・}

 算術平均A(a^n),幾何平均G(a^n),右辺はa1,a2,・・・,anを置換して得られる値の総和である.

 また,このことから算術平均と幾何平均の大小関係についての有名な不等式

  A(a^n)≧G(a^n)

の別証明が得られる.

  Σ(a1^(n-1)−a2^(n-1))(a1−a2)+Σ(a1^(n-2)−a2^(n-2))(a1−a2)a3+Σ(a1^(n-3)−a2^(n-3))(a1−a2)a3a4+・・・

 =ΣP1(a1−a2)^2+ΣP2(a1−a2)^2+ΣP3(a1−a2)^2+・・・

 =Σ(P1+P2+P3+・・・)(a1−a2)^2

 =ΣP0(a1−a2)^2≧0

 このように2次式の和の形ΣkP^2が出現するのだが,さらに,

  a1=x1^2,a2=x2^2,・・・

とおくと,

  (a1^(n-1)−a2^(n-1))(a1−a2)

 =(x1^2(n-1)−x2^2(n-1))(x1^2−x2^2)

 =(x1^2−x2^2)^2(x1^2(n-2)+x1^2(n-3)x2^2+・・・+x2^2(n-2))

となり,各項が(x1^2−x2^2)x1^(n-2)の平方の形の多項式となっていることがわかる.このことから,多項式P1,P2,・・・それ自体も平方の和となることが理解される.

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