■平方和恒等式(その2)

【1】2平方和定理(フェルマー・オイラーの定理)

(a^2 +b^2 )(c^2 +d^2 )=p^2 +q^2

p=ac−bd,q=ad+bc

 この公式を繰り返して使うと,2次の項をひとまとめにして2つの平方の和にすることができる.

(a^2 +b^2 )(c^2 +d^2 )(e^2 +f^2 )=(p^2 +q^2 )(e^2 +f^2 )=r^2 +s^2

 特別な素数である2を除外して,素数は4で割ると余りが1になるもの(5,13,17,29,37,41,・・・)と3になるもの(3,7,11,19,23,31,・・・)の2種類に分けられます.

 このうち,4n+1の形の素数は2つの整数の平方の和として表されます.たとえば,5=1^2 +2^2 ,13=2^2 +3^2 ,17=1^2 +4^2 ,29=2^2 +5^2

しかし,4n+3の形の素数は1つもこのようには表せないのです.

 この定理はフェルマーの定理と呼ばれ,フェルマーは無限降下法でこれを証明しましたが,その証明は不十分で,100年後のオイラーによって完全な証明がなされています.

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【2】3平方和定理

 4n+3の形の数は2個の平方数の和で表せませんが,同様にして,「8n+7の形の数は3個の平方数の和では表されない.」

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【3】4平方和定理(オイラー・ラグランジュの定理)

 素数に限らず,多くの数は2つの平方数の和として表すことができない.たとえば,

  7=2^2+1^2+1^2+1^2

のように,7を平方数の和として表すには4つの平方数が必要になる.それではすべての正の整数は4つの平方数の和として表すことができるだろうか.答えはyesである.

 「任意の自然数は4つの平方数の和の形に表せる.」

 オイラーはこの定理の直前まで行きながら,最後の段階で成功しませんでした.ラグランジュはオイラーの研究成果からアイデアを得て,1772年,最後の段階を突破しました.その証明中で用いられる基本公式が

(a^2 +b^2 +c^2 +d^2 )(p^2 +q^2 +r^2 +s^2 )=x^2 +y^2 +z^2 +w^2

x=ap+bq+cr+ds,

y=aq−bp+cs−dr,

z=ar−bs−cp+dq,

w=as+br−cq−dp

で,1748年にオイラーによって証明されています.オイラーの4平方恒等式を使うと,ラグランジュの4平方定理が証明できるというわけです.

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