■奇数ゼータと杉岡の公式(その34)

 (その33)において,杉岡幹生氏はζの香りが漂う公式を導出していることを報告したが,今回のコラムではその後の進捗状況をレポートする.杉岡氏はその後も多数の不思議な公式を導出していて,この種の公式が無数に出るそうである.

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page200.htm〜

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~sugi_m/page204.htm

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【1】杉岡公式集

 杉岡公式集のなかからいくつか抜粋するが,ゼータ関数の値を直接表すものではないにせよ,ζの香りが漂う世界もやはり美しい.

[1]Σ(1,∞)1/(1+n^2)^2=−1/2+π/4・{exp(π)+exp(−π)}/{exp(π)−exp(−π)}+π^2/{exp(π)−exp(−π)}^2

 左辺は

  ζ(4)=1/1^4+1/2^4+1/3^4+1/4^4+・・・=π^4/90

に似ているが,右辺は似ても似つかない.

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[2]Σ(1,∞)1/(1+n^2)^3=−1/2+π/4・{exp(2π)+1}/{exp(2π)−1}+π^2/4・{3exp(2π)−1}/{exp(2π)−1}^2+π^3・exp(2π)/{exp(2π)−1}^3+π/16・{8π^2exp(2π)−exp(4π)+4π+1}/{exp(2π)−1}^2

 左辺はζ(6)に似ているが,右辺は似ても似つかない.この式はもう少しきれいに整理できると思うが,そうすればこの式に対称性の美が感じられるようになるかもしれない.

 それにしてもζ(8)に似るΣ(1,∞)1/(1+n^2)^4はずいぶん荘厳な(いかめしい)式になるだろうと予想される.

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【2】雑感(無限のパラドックス)

 ところで,杉岡幹生氏のHPの申し子のような人がいる.彼は杉岡氏のHPを知って無限級数に関心を抱き,無限のなす妙にすっかり心を奪われた.

 チェザロ極限とは平均化処理をした極限のことであるが,彼はチェザロ総和法やアーベル総和法の立場から,なぜ

  ζ(−1)=1+2+3+4+・・・=−1/12

なのかを易しく解説している.

 彼にかかれば以下のような駄文もかなり違ったものになるものと思われる.彼の許可が得られたならば,本HPからダウンロードできるようにしたいと考えている.

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 無限級数:Σ(−1)^k=1−1+1−1+1−1+・・・

は奇数番目まで足して1,偶数番目まで足して0になります.0と1の中間で1/2というわけではありませんが,実際に平均化処理をした極限(チェザロ極限)が有効になることもありますし,

  f(x)=1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1−x)

でxを−1に近づけたときの極限値と考えると1/2になってしまい,整数の和が分数という不思議な結果になりますが,それでうまくいくこともあります.

  1−1+1−1+1−1+・・・=1/2

もちろんこの結論は誤りで,この展開が正しいのは|x|<1に限られ,xが1に等しいか,1より大きい正の数の場合には意味をもちません.x=−1のときこの級数は0と1の間をただ振動するだけですが,オイラーやライプニッツの時代にはかくもあやしげな公式が信じられていたようです.

 さらに,g(x)=xdf(x)/dx,h(x)=xdg(x)/dxを求めると,

  g(x)=x+2x^2+3x^3+・・・=x/(1−x)^2

  h(x)=x+2^2x^2+3^2x^3+・・・=x(1+x)/(1−x)^2

ここで,x=−1とおくと

  P=1−2+3−4+・・・=1/4

  1^2−2^2+3^2−4^2+・・・=0

が得られます.また,S=1+2+3+4+・・・とおくと

  P=(1+2+3+4+・・・)−2(2+4+6+8+・・・)

   =(1+2+3+4+・・・)−4(1+2+3+4+・・・)

   =S−4S=−3S

したがって,

  ζ(−1)=1+2+3+4+・・・=−1/12

という結果が得られます.

  1+x+x^2+x^3+・・・=1/(1−x)と同様にして,

  1/(x−1)=1/x+1/x^2+1/x^3+・・・

ここで,x=1/2とすれば,−2=2+2^2+2^3+・・・

負数が正の無限大に等しくなるというのはまったくの不合理ですが,古き良き時代のことであり,案外,自然に受け入れられたのかもしれません.

 このように,発散級数では非常に多くの逆説を作りだすことができます.これらの級数がどんな場合に等号が成り立つか,xにどんな制限をつければ有限な極限に収束するかを知るためには,数学を論理的に完全にすることがどうしても必要になりました.無限級数の極限値を求める数学は,その後,ガウスやコーシーによって精密科学への変革が成し遂げられました.

 つぎに.幾何級数の無限個の項の和を考えてみましょう.

  S=1/1+1/2+1/4+1/8+・・・

この式の両辺を2倍すると

  2S=2+1/1+1/2+1/4+1/8+・・・

   =2+S

したがって,S=2と計算することは自然に思えます.実際,幾何級数は2に収束します.

 ところが,次の無限個の項の和を考えてみます.

  T=1+2+4+8+16+32+・・・

ここでも,両辺を2倍すると

  2T=2+4+8+16+32+64+・・・

    =T−1

したがって,T=−1となり,正の無限級数の総和が負になって,一見して目がくらんでしまいます.パラドックスを引き起こした謎は,無限大∞は2T=T−1の解にもあるいは2S=S+2の解にもなりうるという点に隠されています.これらは有限の場合に成り立つ考えを無頓着に無限に適用するとばかげたまちがいを起こすことがあることという教訓でもあります.

 なお,

  1−1+1−1+1−1+・・・=1/2

  1+2+4+8+16+32+・・・=−1

右辺はそれぞれ1/(1+x),1/(1−2x)において,x=1とおいたときの値でもあります.

 また,

  1/1−1/2+1/3−1/4+・・・

は調和級数の交代級数で,メルカトールの定数とかグレゴリーの定数と呼ばれます.この値は対数関数のマクローリン展開

  log(1+x)=x−1/2x^2+1/3x^3−1/4x^4+・・・

によりlog2に収束することがわかりますが,元の級数の項の順番を変えると収束値が変動してしまいます.たとえば,負項を正項に変えて.あとでその2倍を引きます.

  1/1−1/2+1/3−1/4+・・・

 =(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)−2(1/2+1/4+1/6+1/8+・・・)

 =(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)−(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)

 =0

これも無限のパラドックスの一つの例です.

 正の項と負の項がいずれも絶対収束するとき,級数の和の順番は勝手に変えてもよいのですが,そうでない場合は足す順序によっては級数の和が異なってきます.実は,条件収束級数の場合,級数の項の順番を適当に変えるとどんな値にでも収束させることができることが知られています.

 グレゴリー・ライプニッツ級数

  1/1−1/3+1/5−1/7+1/9−1/11+・・・

も交代級数であり,収束してその値はπ/4になりますが,正の項だけを集めて作った級数

 1/1+1/5+1/9+1/13+・・・

は収束せず無限大に発散します.

  1/1+1/5+1/9+1/13+・・・

 >1/4+1/8+1/12+1/16+・・・

 =1/4(1/1+1/2+1/3+1/4+・・・)→∞

より発散は明らかです.負の項だけを集めても同様です.したがって,級数の和の順番は変えてはなりません.

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