■加減法(その7)

 16世紀の終わり頃,デンマークの数学者ヴィティヒ,ドイツのクラヴィウスは三角表を使ってかけ算を簡略化する方法を提案した.

  sinA・cosB=1/2・sin(A+B)+1/2・sin(A−B)

 たとえば,0.17365×0.99027を計算するには,三角表を使って

  0.17365=sin10°

  0.99027=cos8°

  sin18°=0.30902

  sin2°=0.03490

  1/2・(sin18°+sin2°)=0.17196

  0.17365×0.99027=0.17196

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 対数表の出現により,1より大きい数のかけ算が可能になり たとえば,2.828×5.657を計算するには,対数表を使って

  log22.828=1.5

  log25.657=2.5

  log22.828+log25.657=4

  2.828×5.657=2^4=16

 対数

  logXY=logX+logY

の出現により,かけ算を足し算に変換できるようになり,加減法は廃れたが,三角恒等式を使った計算は第2次大戦中,照準計算に使われたという話を(その2)に書いた.一種のアナログ・コンピュータだったというわけである.

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  n^2=(n−1)^2+2n−1

  xy==1/4{(x+y)^2−(x−y)^2}

なども計算尺などが使われていた時代を思い起こさせる.

 なお,行列に関する計算でもかけ算は足し算よりも計算がかなり大変なのでかけ算の回数を減らすことは重要である.1969年,シュトラッセンはN×Nの行列の積を計算するのにかけ算の回数をN^3からN^2.8回に減らす方法を開発した.

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