■周期の世界(その11)

 (その10)の続き.

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【2】ゼータ関数と周期

 ところで,s≧2のすべての整数でのζ(s)値は周期になることがわかっています.たとえば,積分

  I=∫(0,1)∫(0,1)1/(1−xy)dxdy/√xy

において,1/(1−xy)を幾何級数として展開し,項別積分すると

  I=Σ1/(n+1/2)^2

 このとき,

  1+1/3^2+1/5^2+1/7^2+・・・

の値が必要になりますが,この値はζ(2)=Σ1/n^2から次のようにして求まります.

  1+1/2^2+1/3^2+1/4^2+・・・

 =(1+1/2^2+1/4^2+・・・)(1+1/3^2+1/5^2+・・・)

 =1/(1−1/4)・(1+1/3^2+1/5^2+・・・)

分母を奇数のベキ乗だけにすると一般式は

  {1-2^(ーs)}ζ(s)

となるのです.したがって,

  ∫(0,1)∫(0,1)1/(1−xy)dxdy/√xy=(4−1)ζ(2)

 さらにζ(3)は,c:0<x<y<z<1として

  ζ(3)=∫(c)dxdydz/(1−x)yz

このように,多くの式の無限和も周期となります.

 このように,s≧2のすべての整数でのζ(s)値は周期になることがわかっていますが,1979年,ボイカーズは周期積分の原理を用いた証明を見つけました.ボイカーズはアペリの論じている考えを土台にして,

  |anζ(3)−bn|<α^(-n)

を導き出したのです.

 さらに一歩進んで,数列{an}と{bn}に,重さ2となる保型形式的解釈を与えることによる証明もあるようです.エレガントな証明ですが,解説するには荷が重い・・・生兵法はけがのもと.

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