■ディオファントス集合(その1)

 一般に3変数以上のディオファントス方程式を解く有力な方法はまったく見つかっておらず,たとえば,

  x^3+y^3+z^3−3=0

が(1,1,1),(4,4,−5)とその並び換え以外の整数解をもつかどうかすらわかっていません.

 1970年,レニングラードの学生であったユーリ・マチアセビッチによって,すべてのディオファントス方程式(不定方程式,有限個の整数係数多項式からなる方程式)の解の存否を判定するアルゴリズムが存在しないことが証明されています.

  Fn+k=FkFn+1+Fn-1Fn

n=kとおくと,

  F2n=FnFn+1+Fn-1Fn・・・F2nはFnの倍数である.

  F3n=F2nFn+1+F2n-1Fn・・・F3nはFnの倍数である.

 一般にF3nはFnの倍数である.また,

  GCD(Fm,Fn)=FGCD(Fm,Fn)

が成り立つ.

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【1】マチアセビッチの補題

 この有名な証明は,フィボナッチ数Fmが(Fn)^2の倍数であることと,mがnFnの倍数であることが同値であるということから示すことができます(マチアセビッチの補題).

(証)数列Fkn mod (Fn)^2を作る.Fm mod Fn=0であれば,mはknという形をしていなければならない.

  Fn mod (Fn)^2=Fn≠0

  Fn+k=FkFn+1+Fn-1Fn

  Fn+1=Fn-1  (mod Fn)

から,

  F2n=FnFn+1+Fn-1Fn=2FnFn+1  (mod (Fn)^2)

同様に

  F2n+1=(Fn+1)^2+(Fn)^2=(Fn+1)^2  (mod (Fn)^2)

 これらの合同式より

  F3n=F2nFn+1+F2nFn-1

=(Fn+1)^2Fn+(2FnFn+1)Fn+1=3(Fn+1)^2Fn  (mod (Fn)^2)

  F3n+1=F2n+1Fn+1+F2nFn

=(Fn+1)^3+(2FnFn+1)Fn=(Fn+1)^3  (mod (Fn)^2)

 一般に,

  Fkn=kFn(Fn+1)^k-1  (mod (Fn)^2)

  Fkn+1=(Fn+1)^k  (mod (Fn)^2)

 ここで,Fn+1とFnは互いに素であるから

  Fkn=0  (mod (Fn)^2)

  kFn=0  (mod (Fn)^2)

  k=0  (mod Fn)

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【2】ツェッケンドルフの定理

 任意の正の整数はフィボナッチ数の和として一意に表現できる.

  n=Fk1+Fk2+・・・+Fkr

 この定理から2進数に似たフィボナッチ数体系を作ることができる.

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 なお,フィボナッチ数は5次式

  −y^5+2y^4x+y^3x^2−2y^2x^3−y(x^4−2)

の正整数値であることが示されています.

 オイラーの公式n2 +n+41のnをn−1に変換すればn2 −n+41,n−40に変換すればn2 −79n+1601が与えられます.1変数の2次多項式ではn2 +n+17や2n2 +29なども高い確率で素数を生成します.それでは,多変数の高次多項式ではどうでしょうか.

 1971年,旧ソ連のマチアセビッチは,素数全体をあるひとつのディオファントス方程式の解として表すことにも成功しています.すなわち,すべての素数をつくる式を生み出したことになるのですが,その式は37次で24個の変数をもつ多項式と21次で21個の変数をもつ多項式でした.これらの多項式は負の値もとり,また,素数は多項式の値として繰り返し出現します.

 すべての素数をもれなくつくり,しかも素数以外はつくらない公式は知られていません.素数を完全に定義する式が存在することは証明されていませんし,存在しないともわかっていません.

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