■ダイヤモンド結晶とK4結晶(その7)

 (その5)では,五角形と六角形からなる多面体には五角形が常に12個あることを証明した.

(証)オイラーの多面体定理で示される制限からいえることとして,

  v−e+f=2,2e≧3f,2e≧3v

を組み合わせると,

  2v+2f=2e+4≧3f+4 → f≦2v−4

  2v+2f=2e+4≧3v+4 → v≦2f−4

また,別の組合せ方をすると,

  3v+3f=3e+6≦2e+3f → 3f−e≧6

  3v+3f=3e+6≧2e+3v → 3v−e≧6

 n本の辺をもつfn枚の面とn本の辺が交わるvn個の頂点をもつ凸多面体について,

  F=f3+f4+f5+・・・

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・

  6F−2E≧12

に代入すると

  3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・≧12

 地図のように2つの辺に囲まれた領域まで許すことにすると,この数え上げ公式は

  4f2+3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・=12

となり,係数が1ずつ小さくなり,それが0となるf6は式中に現れない.

 ここで,

(1)f2=f3=f4=0だとすると,少なくとも12個のf5がなければならないことになる

(2)多面体の面がすべてf5とf6であるならば,f5=12(切頂二十面体)

(3)多面体の面がすべてf4とf6であるならば,f4=6(切頂八面体)

(4)多面体の面がすべてf4,f6,f8であるならば,f4=f8+6(斜方切頂立方八面体)

 今回のコラムではこの証明に倣って,次数が3,4,5,6の2次元格子について調べてみることにする.

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【1】次数3の2次元格子

 オイラーの多面体定理で示される制限からいえることとして,

  v−e+f=0,2e≧3f,2e=3v

  3v+3f=3e=2e+3f → 3f−e=0

 n本の辺をもつfn枚の面とn本の辺が交わるvn個の頂点をもつ2次元格子について,

  F=f3+f4+f5+・・・+fn

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・+nfn

  6F−2E=0

に代入すると

  3f3+2f4+f5−f7−2f8−3f9−・・・=0

となる.

 したがって,次数3の2次元格子には,

(1)六角格子

(2)f5:f7=1:1

(3)f4:f8=1:1

(4)f3:f9=1:1

(5)f3:f12=2:1

などがあることがわかる.

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【2】次数4の2次元格子

  v−e+f=0,2e≧3f,2e=4v

  4v+4f=4e=2e+4f → 4f−2e=0

  F=f3+f4+f5+・・・+fn

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・+nfn

  4F−2E=0

に代入すると

  f3−f5−2f6−3f7−4f8−・・・=0

となる.

 したがって,次数4の2次元格子には,

(1)正方格子

(2)f3:f5=1:1

(3)f3:f4:f5=1:1:1

(4)f3:f6=2:1

(5)f3:f7=3:1

などがあることがわかる.

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【4】次数5の2次元格子

  v−e+f=0,2e≧3f,2e=5v

  5v+5f=5e=2e+5f → 5f−3e=0

  F=f3+f4+f5+・・・+fn

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・+nfn

  10F−6E=0

に代入すると

  f3−2f4−5f5−8f6−11f7−・・・=0

 したがって,次数5の2次元格子には,

(1)f3:f4=2:1

(2)f3:f5=5:1

などがあることがわかる.

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【4】次数6の2次元格子

  v−e+f=0,2e≧3f,2e=6v

  6v+6f=6e=2e+6f → 6f−4e=0

  F=f3+f4+f5+・・・+fn

  2E=3f3+4f4+5f5+・・・+nfn

  3F−2E=0

に代入すると

  −f4−2f5−3f6−4f7−5f8−・・・=0

したがって,

  f4=f5=f6=f7=f8=・・・=0

でなければならない,すなわち,次数6の2次元格子は三角格子だけとなる.

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