■スターリングの不等式(その4)

 正軸体の内接球の体積

  π^(n/2)/Γ(n/2+1)・1/n^n/2=π^k/k!・1/(2k)^k

とn次元切頂八面体の体積

  1/2・(2/n)^n・2^n=1/2・{1/k}^2k・2^2k

の大小比較を行ってみたい.

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 k!/k^kと2(π/8)^kの大小を比較することになるが,

  1/k・2/k・・・(k−1)/k・k/k≦1/2^k-1

は証明済みである.

 π/8<1/2より,

  2(π/8)^k≦1/2^k-1=2(1/2)^k

n次元切頂八面体を正軸体の内接球で近似することによって,不等式が改良されたことになる.

 なお,

  正軸体の内接球の半径=1/√n=√n/n

であるから,n=4のとき,1/√n=2/nとなって,4次元切頂八面体(すなわち正24胞体)に内接する.しかし,n>5のとき

  1/√n>2/n

になって,内接球はn次元切頂八面体を包含しないことが示される.

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 さらに,πe=8,539・・・より,1/e<π/8<1/2

  2exp(−k)≦2(π/8)^k≦2(1/2)^k

が示される.

 スターリングの公式は,kがおおきくなるにつれて

  n!/n^n〜√(2πn)exp(−n)

であるから,ここまでくればスターリングの公式に非常に接近した値が得られたことになる.

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[まとめ]

 正軸体と切頂正軸体の体積比較によって,不等式

  n!/n^n≦2(1/2)^n

正軸体の内接球と切頂正軸体の体積比較によって

  n!/n^n≒2(π/8)^n

Wallisの公式を使って

  n!/n^n≒√(2n/π)(π/8)^n

が得られた.

 さらに,πe=8,539・・・より,

  (π/8)^n≒(1/e)^n

が示される.スターリングの公式には図形的近似が奏効するというわけである.図形的な方法では限界があるとはいえ,面白い結果と思う.

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