■ダイヤモンド結晶とK4結晶(その4)

 今回のコラムでは,中川宏さんによる木工結晶模型を供覧したい.

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【1】K4結晶構造模型

 K4結晶では,格子のすべての頂点の次数は3である.ダイヤモンド結晶が6角形の連なりからできているのに対し,K4結晶では10員環からなる網の目がみられる.

 K4結晶を充填立体表現すると空間充填18面体=4軸構造と関係している.

 珪化ストロンチウム(SrSi)はSiのカゴ状構造中のなかにSrが取り込まれた形をしていて,珪素原子の配列はK4結晶構造をとる.珪素原子間の結合で一番近いのを繋ぐと全部3本になる.

 以下の写真は珪化ストロンチウム模型であるが,シリコンは切稜立方体,ストロンチウムは球で表してある.実際の原子分子の世界では,珪化ストロンチウムはK4結晶構造がわずかにゆがんで,最も安定な原子配置をとるような微小調整「構造最適化」が行なわれているものと思われる.

 この構造を炭素でつくれないだろうかというのは自然な発想であろう.ダイヤモンド結晶が存在するのだから,K4結晶が現実の存在しても不思議ではない.K4が炭素結晶として合成されれば「自然は対称性を好む」ことの1つの例となるわけである.

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【2】ロンスデール結晶構造模型

 ロンスデールは結晶学者で,隕石の落下地点で見つけたダイヤモンドから(のちに自分の名前を冠してしかも女王陛下から称号を授けられることになる)ダイヤモンド変態を見つけました.

 写真は切頂八面体で作ったロンスデライト模型です.ロンスデール格子を真横からみるとダイヤモンドと変わりがありませんが,真上からみると蜂の巣状に見えます.オレンジに色づけした部分がダイヤモンド結晶と違う鏡映部分です.

 ロンスデライトの充填立体表現は,六方最密充填(菱形台形12面体模型)の柱を縮めた形として作ることもできます.砂田利一先生は結晶学者とは別の視点からロンスデライトに着目されたのですが,科学の発展というのは多様な側面をもつことにいまさらながら感心させられます.

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【3】ダイヤモンド結晶構造模型

 ダイヤモンド格子は正四面体の重心と頂点に位置する.すべての頂点の次数は4で(sp3混成),ダイヤモンドの最大周期格子は面心立方格子A3である.炭素原子からはそれぞれ4本の手がでていて,隣り合う4点と2本の手を共有しできる限り対称的なものを作り上げていることになる.

 また,K4結晶は空間充填18面体と関係しているのに対し,ダイヤモンド結晶の充填立体表現は炭素原子が正四面体配置をとるから空間充填16面体と関係していることになる.

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【4】雑感

 グラファイト(黒鉛)からK4に構造的に相転移するためには高圧の環境が必要である.K4結晶は準安定系なので合成は難しいかもしれないが,たとえば篭形の分子の中に原子や小分子を詰め込むことによって安定化させる方法があるわけで,東北大学の物質科学グループ(阿尻,川添,伊藤)の研究がうまく進展することを期待している.

 篭形の分子の中に原子や小分子を容れることは化学者が昔から夢想することにひとつであるが,まったくの無駄かというとそうでもない.例をあげるとフラーレンの中に水素分子を容れることに莫大な研究費と時間とマンパワーが使われたりするが,水素燃料自動車用の水素運搬に活用できるかもしれないのである.もちろん合成されてもおもしろい物質になるかどうかはわからないが,それでもうまくいくとよいと思う.

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