■オイラーの多面体定理から(その1)

 3次元凸多面体の頂点,辺,面の数をそれぞれv,e,fとすると,

  v−e+f=2  (オイラーの多面体定理)

が成り立ちます.たとえば,正八面体ではf=8,v=6,e=12.切頂20面体ではf=32(正五角形12枚,正六角形20枚),v=60,e=90でオイラーの公式が成り立っているが,正多面体に限らず任意の凸多面体について常に成立する公式である.

 これは3次元立体について,0次元の特性数であるv,1次元の特性数であるe,2次元の特性数であるfの関係を述べたものと解釈され,最も美しい数学の10大定理の1つに挙げられるものです.量(v−e+f)はオイラー標数と呼ばれます.オイラー標数は幾何学において重要な概念である位相不変量の草分けであり,オイラーの多面体定理を利用すると,

  1)どの面も同数の辺で囲まれている.

  2)どの頂点にも同数の辺が集まっている.

という仮定をするだけで,正多角形であるという仮定をまったくせずとも正多面体は5種類しかないことを証明可能になります.

 これが実に役立つ公式で,たとえばオイラーの多面体定理で示される制限から,正多面体は5種類しかないとか,すべての面が六角形であるような多面体は存在しないという結論,単一の凸n角形で平面を敷き詰めるものはn≧7では存在しないこと,2次元以上ですべての頂点の次数が6以上となることは不可能であり,必ず次数が5以下の頂点をもつことなどが導き出されます.

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 オイラーの多面体定理を使うと

[1]2次元泡細胞の辺数の平均は≦6であり,すべての泡細胞が6辺以上の辺をもつことは不可能である

[2]3次元泡細胞の面数の平均は≦14であり,すべての泡細胞が14面以上の面をもつことは不可能である

ことが証明される.

 ここでは[1]を扱う.多面体の各々の面の辺数をp1,p2,・・・,pf,頂点における辺の次数をq1,q2,・・・,qvで表すと

  3f≦p1+p2+・・・+pf=2e

  3v≦q1+q2+・・・+qv=2e

 したがって,

  e+6≦3f≦2e

  e+6≦3v≦2e

  p=2e/f≦6−12/f<6  (QED)

  q=2e/v≦6−12/v<6

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