■ダイヤモンド結晶とK4結晶(その3)

 2次元平面内の結晶構造は4種の結晶系,5種のブラーベ格子,10種の点群,17種の空間群,3次元空間内の結晶構造は7種の結晶系,14種のブラーベ格子,32種の点群,230種の空間群が存在することが知られている.

 これらは19世紀末に完成をみた古典的な話題であって,現在,幾何学と結晶学はほとんど関係ないように思われていた節がある.ところが,砂田利一先生によってK4結晶が新たに記述されたのである.

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【1】砂田の定理

 『3次元結晶格子で強い対称性と等方性をもつものはダイヤモンド格子とK4格子に限られる.』

 2次元結晶格子で強い対称性と等方性をもつものは正六角形格子のみであるが,3次元結晶格子で強い対称性と等方性をもつものはダイヤモンド格子だけではなく,K4格子も強い対称性と等方性をもつのである.

 砂田先生は材料科学の研究者とK4結晶を実際に作るプロジェクトを開始している.

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【2】結晶の対称性の群

 3次元の格子状配置は19世紀の初めから,結晶内の原子の配列を記述するのに使われてきたものであり,対称性の群の分類についての仕事の大半は,ブラーベ,フェドロフ,シェーンフリースなど19世紀の結晶学者によってなされた.

 空間での等長変換は,平行移動,回転,並進回転,鏡映,すべり鏡映,回転鏡映,恒等変換の7種類であるから,3次元結晶群は219種類存在し,その多くが結晶構造として自然界にも存在している.(結晶をテーマとする物理の本には,たいてい3次元結晶群の数は230種類存在すると書かれてあるが,変換が向きを保たないものは異なるものと数えているからである.)

 219(230)通りの空間群が解明されたことで,本質的にはすべて解明されたことになり,そして,これから決まる本質的なディリクレ領域は,ロシアの結晶学者フェドロフの見つけた5種類の平行多面体しかない.

 なお,平面上での等長変換は,平行移動,回転,鏡映,すべり鏡映,恒等変換の5種類あり,また,2次元結晶の回転角は,60°・90°・120°・180°・240°・270°・300°しかないことを考察することにより,2次元格子で異なる対称性をもつものは17種類存在することがわかる.この17種類の対称性は,2次元結晶群としてとらえることができる.この問題は,ロシアのフェドロフとドイツのシェーンフリースによって,まったく別々に解かれた.また,4次元のフェドロフ結晶群は4783種類(4895種類)存在する.

 さらに3次元ブラーベ格子には1848年にブラーベが発見した14種類,4次元のブラーベ格子は64種類(74種類:10組は対掌体の関係)ある.

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