■高次元結晶と通信理論(その22)

【1】球面における最密充填と最疎被覆

 n個の頂点をもつ三角形面多面体では,3f=2eですから,

  (v,e,f)=(n,3n−6,2n−4)

すなわち,球面上にn個の点を配置した場合,2n−4はn個の頂点をもつ三角形面正多面体の面数となります.

 一方,n個の面をもつ3稜頂点多面体では,3v=2eであり,

  (v,e,f)=(2n−4,3n−6,n)

となります.これらは互いにもとの多面体と面と頂点の関係が逆向きの正多面体であり,表と裏の関係にある双対多面体となっています.

  ωn=n/(n−2)・π/6   n≧3

を導入すると,球面上に大きさの等しい球帽を埋め込むときの充填密度はωnを用いて,

  d≦n/2(1−1/2cosecωn)

球面が等大球帽で被覆されるときの被覆密度は

  D≧n/2(1−1/√3cotωn)

なる不等式を満たすことが求められます.

 等号はn=3,4,6,12の場合のみ成立し,それぞれ円の中心が正三角形,正4面体,正8面体,正20面体の頂点にくる場合に対応します.また,これらの不等式の上界・下界は,nの増加とともにそれぞれ平面における極限値

  π/√12,2π/√27

に近づくことが示されます.

 なお,平面上において等大円を配置して,1個詰められるだけの隙間の存在しないように最も不経済な円配置(飽和した系)をつくることにすると,それは最疎な円被覆において,各円をその半分の半径の円によって置き換えることにより生じますから,その最疎密度は,

  d≧π/√108=0.302・・・

になります.

 球面上において,同様の問題を考えると,球帽の最疎な飽和系では

  d≧1−√2/2=0.29289・・・

であり,等号は球面半径π/4をもち球の両極に位置する2つの球帽の場合に限り成立します.

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