■デューラーの八面体の設計(その23)

 (問)ビールの泡のひとつひとつが同じ体積だと仮定して,表面張力で泡と泡の境界の総面積が最小になるとき,泡はどんな形か?

 すなわち,空間を体積が等しい凸多面体で,平均表面積ができるだけ小さくなるように分割せよという問題を考えることができます.

 この問題はかなり長い間,菱形12面体による空間分割が解だと考えられていたのですが,これに対して,体積1のときの表面積を求めると,菱形12面体型分割では

  3√108√2=5.345・・・

切頂8面体型分割では

  3/43√4(1+√12)=5.314・・・

と後者の方が約0.5%少なくなることが,1887年,英国の物理学者ケルビン卿によって発見されています.

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【1】S^3/V^2比の最小化

[1]平面凸集合に関して,周の長さLが一定で面積Aが最大の図形(面積が一定で周の最小な図形)は円であるという事実は古代ギリシアの時代からよく知られています.そのことはL^2≧4πAという不等式で表現されます.等号は円のときだけ成立します.

 同様に,3次元凸集合に対し,表面積をS,体積をVとするとS^3≧36πV^2が成り立ちます.等号成立は球のときだけで,すべての立体中で球が表面積に対して最大の体積をもっています.

 等周不等式は,平均曲率一定曲面と密接な関わりをもっています.凸体Vを囲む曲面Sにおいて,平均曲率は,

  H=1/2(1/R1+1/R2)

で定義されます.ここで,平均曲率の積分を

  M=∫Hds

で表すと,ミンコフスキーの不等式

  S^2−3VM≧0

  M^2−4πS≧0

これから直ちに

  S^3≧36πV^2

が導かれます.

 ところで,

  (1)シャボン玉はなぜ丸くなるのでしょうか?

  (2)クマはなぜ丸くなって冬眠するのでしょうか?

S^3≧36πV^2に関係していることは直感的に発想できるでしょう.クマやリスなど動物達は(この定理を知っているから)丸くなって冬眠しますが,(この定理を知らない)酔っぱらいのオヤジは往来に大の字になって寝ていて凍死するはめになるというわけです.

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