■デューラーの八面体の設計(その20)

【1】榎本モデル

 菱形六面体の菱形面の対角線の長さを2dと2,頂角をθとする.デューラーの八面体に関する榎本説とは,θ=72°というものである.

 72°というのはdの値が解析的に求められる特別の角であって,正五角形(黄金比)と関係していることは説明するまでもないだろう.

  d^2=(5+2√5)/5

 ここで面白いことがわかる.θ=72°のときのtは

  t=2(d^2−1)/(d^2+1)=(√5−1)/2=1/τ

  τ=(√5+1)/2

と表される.すなわち,頂角72°の菱形六面体を黄金比切頂すると,球に内接するのである.

===================================

【2】宮本モデル

 球に内接し,かつ,入れ子構造を持ち,8個の面がすべて合同な5角形の8面体であるためには,菱形の対角線の長さを2dと2,切頂率をtとすると,

  d=√(13/7),t=3/5

であることが必要である.

===================================

【3】佐藤モデル

 数学的にみて蓋然性があるもうひとつの候補が,外接球と内接球を同時にもつ双心多面体である.この計算は3次方程式に帰着されるため,定規とコンパスで作図可能ではない.

  d^3+4d^2/√3−7d+4/√3=0

  d=1.43929

===================================

[1]榎本モデル [2]宮本モデル [3]佐藤モデル

  θ=72   θ=72.5425   θ=69.5822

  A=38.1727   A=38.3288   A=37.5055

  B=22.4555   B=21.8454   B=25.1381

  C=47.2567   C=46.9113   C=48.7874

  t=.618034   t=.6   t=.697728

 [1][2]の違いは肉眼で確認できるような差はないと思われのに対し,[3]はかなり違いが出るのではないだろうか?

===================================