■ウィア・フェラン泡(その15)

[1]ケルビンの14面体

 空間分割のひとつの例として石鹸の泡によるものがあり,昔から物理学者の研究の対象になってきた.石鹸の泡による空間分割に結びつく物理的作用はいうまでもなく表面積を極小化しようとする力(表面張力)であるから,ここでは石鹸膜を作る素材の総量を一定なものと仮定してみよう.最小の素材の下で得られるべき利得を最大にすることは商業上重要というだけでなく,物理学分野でも合目的的な構築原理である.

 等周定数(S^3/V^2)を用いて体積1のときの表面積を求めると,菱形12面体型分割では

  3√(S^3/V^2)=3√108√2=5.345・・・

切頂8面体型分割では

  3√(S^3/V^2)=3/43√4(1+√12)=5.314・・・

と後者の方が約0.5%少なくなる.

 このようにして,1887年,英国の物理学者,ケルビン卿(ウィリアム・トムソン)は石鹸の泡による空間分割の力学的研究から切頂八面体の集合によって空間を満たすことができ,そのときの界面積は菱形十二面体で満たしたときより小さいことを発見した.

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[2]切頂立方体(1≦d≦2の場合)

 この場合,正方形面の対角線の長さの半分をrとしてパラメトライズすると,

  r=2−d

となります.

 正方形面の面積:S4=2r^2=2(2−d)^2

 六角形面の面積:S6=√3/2(1+2r−2r^2)

           =√3/2(−3+6d−2d^2)

また,

 六角形面の中心の座標:(1−d/3,1−d/3,1−d/3)

ですから,

 原点から正方形面までの距離:H4=1

 原点から六角形面までの距離:H6=√3(1−d/3)

 以上により

  表面積:S=6S4+8S6

       =12(2−d)^2+4√3(−3+6d−2d^2)

       =(12−8√3)d^2+(24√3−48)d+48−12√3

  体積:V=6S4H4/3+8S6H6/3

      =4(2−d)^2+4(−3+6d−2d^2)(1−d/3)

      =8/3d^3−12d^2+12d+4

 任意の切頂立方体は球に内接します.一方,球に外接(内接球が存在)するための条件は

  √3(1−d/3)=1 → d=3−√3

となります.六角形面が正六角形となる切頂八面体ではd=3/2ですから,切頂八面体は球に外接しないことがわかります.

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[3]S^3/V^2比の最小化

  3S’V−2SV’=0

より,S^3/V^2が最小値をとるdを求めると

  d=3−√3

となって,前述の内接球をもつための条件と一致しました.したがって,等周比の点からいうと,内接球をもつ「切頂14面体」が最も球に近いことになります.

 なお,「切稜18面体」においてもS^3/V^2が最小値をとる条件と内接球をもつ条件とが一致しましたが,このことは正多面体の切頂多面体,切稜多面体についても一般的にいえることなのかもしれません.確かめたわけではありませんが・・・

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