■オイラーの素数生成式(その6)

【6】マチアセビッチの素数生成式

 1次式:f(x)=ax+pに対して考えてみると,この等差数列の集合は無限に多くの素数を含む(ディリクレの算術級数定理)のですが,

  f(0)=p,f(p)=(a+1)p

ですから,0,1,・・・,p−1のとき,素数値をとるのが最良です.

 p個の素数を連続してもつ等差数列としては,たとえば,

  f(x)=x+2は連続した2個の素数値2,3をとる.

  f(x)=2x+3は連続した3個の素数値3,5,7をとる.

  f(x)=6x+5は連続した5個の素数値5,11,17,23,29をとる.

  f(x)=150x+7は連続した7個の素数値7,157,307,457,607,757,907をとる.

  f(x)=1536160080x+11は連続した11個の素数値をとる.

  f(x)=9918821194590x+13は連続した13個の素数値をとる.

  f(x)=341976204789992332560x+17は連続した17個の素数値をとる.

・・・しかし,すべての素数pに対して,このような等差数列が存在するかどうかは知られていません.

 それでは,多変数の高次多項式ではどうでしょうか.1971年,旧ソ連のマチアセビッチは,正の値がすべて素数の集合となる多項式が存在するという驚くべき事実を,ヒルベルトの第10問題の副産物として発見しています.

 その式は37次で24個の変数をもつ多項式と21次で21個の変数をもつ多項式でした.この多項式は負の値もとり,また,素数は多項式の値として繰り返し出現します.(現在のこのような式の最低次数は5,最底変数は10になっています.)

 すべての素数が作れて,この公式から素数が漏れることはありません.ただし,ほとんどが負の値となってしまうのでマチアセビッチの素数生成式は事実上役に立ちませんでした.この式からは素数について新しいことはほとんどわからなかったのです.なお,整数係数をもつ多項式が,常に素数値をとることは不可能であることは証明されています.一方,すべての素数をもれなくつくり,しかも素数以外はつくらない公式は知られていません.素数を完全に定義する式が存在することは証明されていませんし,存在しないともわかっていません.

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