■e^1/2に収束する分数列(その1)

 球に相当するn次元の図形を超球と呼びます.n次元単位超球{x12+x22+・・・+xn2≦1}の体積をVnとすると,V1=2(直径),V2=π(面積),V3=4π/3(体積)はご存知でしょう.n次元単位球はどんなに次元が高くても,長さが2より大きな線分を含むことはできません.

 n次元単位超球の体積Vn,その表面積を表面積Sn-1とすると,単位超球の表面積Sn-1はnVn,半径rのn次元球の体積はVnr^n,表面積はnVnr^(n-1)となります.n次元単位超球の体積Vnを求めてみると,

  Vn=π^(n/2)/Γ(n/2+1)

を得ることができます.また,Γ(m+1)=m!より,この結果は,形式的に

  Vn=π^(n/2)/(n/2)!

と書くことができます.

 一方,半径rのn次元超球の体積はVnr^nですから,体積を1とするrの値はVn^(-1/n)で与えられます.また,n次元超球の中心を通る超平面による切り口は(n−1)次元超球であり,その体積はVn-1r^(n-1)で表されますから,体積が1の超球の切り口の体積は

  Vn-1・Vn^(1/n-1)

となります.

n Vn-1・Vn^(1/n-1)

2 1.128

3 1.209

4 1.265

5 1.307

6 1.339

7 1.365

8 1.387

9 1.405

10 1.420

11 1.434

12 1.445

13 1.456

14 1.465

  An=Vn-1・Vn^(1/n-1)

とおくと,

  An/An-2=Vn-1・Vn^(1/n-1)/Vn-3・Vn-2^(1/(n-2)-1)

ですから,n→∞のとき,

  An/An-2→(Vn/Vn-2)^(1/n)=(2π/n)^(1/n)→1

これより,次元を高くすれば断面積はある極限値に収束しそうです.n→∞のとき,Vn-1→0,Vn→0ですが,An=Vn-1・Vn^(1/n-1)の極限値を求めてみることにしましょう.

 Vn=π^(n/2)/(n/2)!より,

  An={(n/2)!}^(1-1/n)/{(n-1)/2}!

これを有名なスターリングの近似公式

  k!=√2π・k^(k+1/2)・exp(−k)

を使って書き直してみましょう.簡約化すると

  An→(n/2)^(n/2)/{(n-1)/2}^(n/2)

    ={n/(n-1)}^(n/2)

    ={(1+1/(n-1))^(n-1)}^(1/2)*{n/(n-1)}^(1/2)

    →e^(1/2)

したがって,極限値√e=1.6487・・・に収束することがわかります.

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