■デューラーの八面体の設計(その9)

 古代において,気分は体液のバランスに基づいて変化し,黒い胆汁が多いときにはムードが低下し,憂鬱になる考えられていた.その状態がメランコリー)黒胆汁質)である.

 デューラーが「メランコリア」を製作したのは,考える人の背景にある魔方陣の数の並びから1514年といわれている.また,その絵には梯子が立てかけられていて,その角度は72°であるという意見はほぼ定説となっている.

 梯子の手前には奇妙な形の八面体が描かれてある.この八面体は菱形六面体の2頂点を切頂したものであるが,もとになる菱形の鋭角の角度には諸説あるようだ.ひとつの有力な説として,菱形の鋭角も72°であって,その菱面体を1:τで切頂すると,切頂菱面体は外接球をもつというものである.

 外接球をもつことはすぐに検証できて正しいことがわかる.この説は美しいものはとことん黄金比と関係しているに違いないという希望が込められているのだと思うが,この切頂菱面体のガラス模型は当時20万円で売られていたという.

 しかしながら,切頂菱面体のなかに切頂菱面体が無限に内接する入れ子構造になっているという説明は間違いである.宮本次郎先生に教えてもらったのであるが,入れ子構造にするためには切頂比を1/τ=0.618ではなく,0.6にしなければならないのである.

 たまたま0.618と0.6が工作の誤差範囲内であったことから,これを支持する人達が続出,NHKの番組でも取り上げられてしまったことから,間違いが流布してしまった.

 しかし,そのままにするのは忍びないので,外接球と内接球を同時にもつ双心八面体,あるいは入れ子八面体になるための条件を計算した.

[1]榎本モデル

[2]宮本モデル

[3]佐藤モデル

について,近々,中川宏さんに木工製作してもらうつもりである.

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