■タイル貼り芸術の極致(その6)

 たとえば,結晶の相転移を考える.FCCからBCCへの相転移では対応するボロノイ領域は菱形十二面体から切頂八面体に転化する.

 このように,結晶の相転移を思いきり単純化して考えると,平行多面体同士の相互転化ということになる.物理化学の現象を説明するために考え出されたこの数学モデルは有効である.実際,平行多面体はデーン不変量0の多面体であって,ヒンジを用いて多面体の形,表裏を翻転を反転させることができる.カラーもフレーバーも相互転化するというわけである.

 それに対して,準結晶は簡潔な幾何学的定義を与えることが難しい対象である.結晶と準結晶は「高次元立方体」を使うと,同じ文脈の中で考えることができるのであるが,どの次元より高次であれば準結晶,どの次元より低次であれば結晶というような境界線を引くことができない.

 両者の境界線を引くことは難しいが,2次元に投影したときに平行四辺形・六辺形になるならば結晶,八辺形以上であれば準結晶とせざるを得たいようだ.数学的に見てもダサイ定義であろう.

===================================