■基本単体の二面角(その32)

 R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系となります.ルート系の分類は,それ自体大変面白いものなのだそうですが,既約ルート系の同型類には,AからGまでのアルファベットに,添字として階数をつけた名前が付いていて,E8型ルート系などと呼ぶ習慣になっています.

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 A3型,D4型,E8型のディンキン図形は,

      3         1−2−3  (A3 )

     /                             

  1−2   (D4 )        4              

     \              |              

      4         1−2−3−5−6−7−8  (E8 )

そして,ディンキン図形に基づいて,隣接行列の要素bijを,

  それ自身のとき・・・・2

  結ぶ辺があるとき・・・1

  結ぶ辺がないとき・・・0

と定めます.

 これは,隣接行列{bij}が内積bi↑・bj↑からなるグラミアンによって定義され,その際,n次元平行多面体の基底となるn個のベクトルbkはすべて長さ√2,biとbjが隣り合うときは2つのベクトルは角度60°で交わり(内積=1),隣り合わないときは直交すること(内積=0)を意味しています.

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【1】ルート系の例

 ルートは,半単純リー群の分類とか,特異点,正多面体の決定の際にも現れ,数学のさまざまな領域で重要な働きをします.

 ここで,R^nの標準基底をe1,・・・,enとしましょう.

  ei=(0,・・・,1,0,・・・,0)

たとえば,R^3の標準基底をe1,e2,e3,R^4の標準基底をe1,・・・,e4,R^8の標準基底をe1,・・・,e8とすると,A3型ルート系は,

  Φ={e1−e2,e2−e3,e3−e4}

D4型ルート系は,

  Φ={e1−e2,e2−e3,e3−e4,e3+e4}

E8型ルート系は,

  Φ={e1−e2,・・・,e7−e8,e0−e1−e2−e3}

のようにとれます.

 ここで,それぞれ,

  αi=ei−ei+1

  αi=ei−ei+1,αn=en-1−en

  αi=ei−ei+1,α0=−e1−e2−e3

とおきます.そうすると,E8型ルート系の場合,

  α1−α2−α3−α4−α5−α6−α7

       |          

       α0          

となり,前述のディンキン図形が求まります.このように,ディンキン図形は特異点とルート系の架け橋となっているグラフなのです.

 ルートは鏡映を与えるベクトルとして理解することができるのですが,8次元ユークリッド空間において,8次元単体(4面体の拡張)を鏡映したものからなるモザイク模様に対してベクトルの集合を考えることによって,E8型ルート系が得られるというわけです.多岐にわたる話題の中に少なからぬ重要性をもって現れるわけですから,魅力的な世界を形作っていると申せましょう.

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