■デューラーの八面体の設計(その7)

 宮本次郎先生(岩手)より,榎本さんの1998年7月に佐谷画廊での展示会のときのパンフレットから入れ子構造についての部分を抜粋したものを頂いた.

 このパンフレットには辺の長さが記載されているが,私が行った計算(その1〜2)は内外それぞれ12個の頂点座標を計算したもので,レーザー加工で模型を作る場合,どっちが役に立つかはわからない.

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 「メランコリアT」の梯子の角度は72°傾いているという.72°というのはdの値が解析的に求められる特別の角であって,正五角形(黄金比)と関係していることは説明するまでもないであろう.

 正五角形に対角線を描き入れると星形五角形(ソロモンの星)ができる.星形五角形の内部にはもとの正五角形を天地逆転させた小さな正五角形ができる.その中にまた星形五角形を作ると再び順方向の正五角形ができる.このように正五角形は無限に続く入れ子構造を有している(ペンタグラム).この入れ子構造の背後には黄金比が潜んでいる.黄金比は興味深い数であって,フィボナッチ数列とも密接な関係があることはご存知であろう.

 ゲーテの「ファウスト」ではペンタグラムの無限の中に忍び込んだメフィストテレスが出るに出られないで困る場面が書かれている(私はこれを水木しげる氏の悪魔くんで知ったのであるが・・・).黄金比によって入れ子構造が生み出されているのだが,逆にいえば,このような構造を有することが正五角形の特徴となっている.そして,頂角72°の菱形六面体を黄金比切頂してできるデューラーの八面体が正五角形のように無限に続く相似な八面体の入れ子構造を有するというのが榎本さんの説である.

 つまり,この八面体は正五角形の3次元空間におけるアナローグ(類似物)と考えられるというのである.榎本さんの結果は大きな関心を呼び,NHKの「日曜美術館」や「クローズアップ現代」でも取り上げられたらしい.

 なお,72°説の他には76°説,80°説,82°説などがあるそうだ.

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 イメージミッション社の前畑謙次会長のお話では,デューラーはニュルンベルグ生まれ.ニュルンベルグはワーグナーのニーベルンゲンの指輪で有名な都市であるが,そこでは国際おもちゃショーが毎年開催されるとのこと.

 国際おもちゃショーの記念グッズとして,あるいは,デューラーのミュージアムグッズとして,デューラー多面体を作る価値は十分あるだろうと思う.

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