■デューラーの八面体の設計(その2)

 これまで同様,菱形の鋭角が3つ集まって構成される頂点を原点として,この菱面格子の3つの基本ベクトルを

  a↑=(d,1,0)

  b↑=(d,−1,0)

  c↑=(x,0,z),x^2+z^2=d^2+1

とおきます.

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【1】切頂八面体の入れ子の計量

 菱形の鋭角が3つ集まって構成される2つの頂点

   (0,0,0),(2d+x,0,z)

までの距離は等しく

  R^2=(d+x/2)^2+(z/2)^2=(9d^2−3)/4

です.

 2つの頂点を切頂して球に内接する多面体を作ったわけですが,菱形六面体を球に内接するように切頂すると,新たに正三角形面が2面できます.切頂によって新たにできる三角形は1辺の長さが2tの正三角形です.

 切頂によってできる正三角形面の座標は

  (td,t,0),(td,−t,0),(tx,0,tz)

  (2d+x−td,−t,z),(2d+x−td,t,z),(2d+x−tx,0,z−tz)

 すると,切頂によってできる正三角形面のそれぞれの中心(重心)は

  ((2d+x)t/3,0,zt/3)

  ((2d+x)(1−t/3),0,z(1−t/3))

と計算されます.この2点が新たな菱形六面体の頂点になります.

 それぞれの中心(重心)を通る球の半径rを求めてみると

  r^2={(d+x/2)^2+(z/2)^2}(1−2t/3)^2

    =R^2(1−2t/3)^2

で与えられます.もとの菱形六面体との相似比sは

  s=1−2t/3,t=2(d^2−1)/(d^2+1)

で与えられるというわけです.

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【2】入れ子の縮小

 デューラーの八面体の12頂点の座標を(x’,y’,z’)とすると,縮小デューラーの八面体の座標は(sx’,sy’,sz’)を正三角形面の中心(重心)

  ((2d+x)t/3,0,zt/3)

に平行移動させなけれなりませんから,

  x”=sx’+(2d+x)t/3

  y”=sy’

  z”=sz’+zt/3

 ただし,ここで

  x=d−1/d,z=√(3−1/d^2)

  t=2(d^2−1)/(d^2+1),s=1−2t/3

で与えられることになります.

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【3】入れ子の回転

 次に,2つの頂点

   (0,0,0),(2d+x,0,z)

を結ぶ直線を軸として入れ子を天地逆転させることを考えます.

 ここで,単位ベクトル

  n↑=(α,β,γ)   α,β,γは方向余弦で,α^2+β^2+γ^2=1を満たすものとする.

  (2d+x)^2+z^2=(3d−1/d)^2+(3−1/d^2)=9d^2+9

  α=(2d+x)/3(d^2+1)^1/2,β=0,γ=z/3(d^2+1)^1/2

 それを回転軸とし,その周りに正の回転方向にθだけ回転する回転行列

  R(1,1)=α^2(1-cosθ)+cosθ

  R(2,2)=β^2(1-cosθ)+cosθ

  R(3,3)=γ^2(1-cosθ)+cosθ

  R(1,2)=αβ(1-cosθ)+γsinθ

  R(2,1)=αβ(1-cosθ)-γsinθ

  R(1,3)=αγ(1-cosθ)-βsinθ

  R(3,1)=αγ(1-cosθ)+βsinθ

  R(2,3)=βγ(1-cosθ)+αsinθ

  R(3,2)=βγ(1-cosθ)-αsinθ

で与えられる.[補]θ→−θとした公式もある.その場合,cosθ→cosθ,sinθ→−sinθとなる.

 天地逆転ではθ=π/3であるから,

  R(1,1)=α^2/2+1/2

  R(2,2)=β^2/2+1/2

  R(3,3)=γ^2/2+1/2

  R(1,2)=αβ/2+γ√3/2

  R(2,1)=αβ/2−γ√3/2

  R(1,3)=αγ/2−β√3/2

  R(3,1)=αγ/2+β√3/2

  R(2,3)=βγ/2+α√3/2

  R(3,2)=βγ/2−α√3/2

 さらに,β=0であるから,回転行列Rは

R=[α^2/2+1/2,γ√3/2,αγ/2]

  [−γ√3/2,1/2,α√3/2]

  [αγ/2,−α√3/2,γ^2/2+1/2]

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【4】入れ子の12頂点の座標(ξ,η,ζ)

  x”=sx’+(2d+x)t/3

  y”=sy’

  z”=sz’+zt/3

として

  ξ=(α^2+1)/2・x”+γ√3/2・y”+αγ/2・z”

  η=−γ√3/2・x”+1/2・y”+α√3/2・z”

  ζ=αγ/2・x”−α√3/2・y”+(γ^2+1)/2・z”

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