空間充填多面体は3回回転対称性をもつものが多い.5種類あるフェドロフの平行多面体然り,空間充填16面体然り,空間充填18面体然り.正多面体だってすべて3回回転対称性をもっている.
幾何学の問題では正多面体に関するものだけでもいろいろおもしろい課題があるが,「正多面体に内接する最大の別の多面体は何か」という問題の1例として,立方体に内接する最大の正八面体を考えてみる.立方体に内接する最大の正八面体が立方体に収まる様子は立方体の3回回転対称軸である[1,1,1]方向に正八面体の3回回転対称軸が一致する.
立方体に含まれる最大体積の正十二面体でも,正四面体・正二十面体でも立方体の3回回転対称軸である[1,1,1]方向に正八面体の3回回転対称軸が一致している.
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【1】中川予想
立方体に含まれる最大体積の正P面体は立方体の3回回転対称軸に3回回転対称軸が合致したときに得られるようであるが,中川宏さんはそれを敷衍して,すべてのプラトン立体,アルキメデス立体,カタラン立体において,立方体に内接する最大体積の多面体Pは3回回転対称軸を立方体のそれに合致したときに得られると予想している.
菱形十二面体と切頂点八面体の場合を写真で示す.
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【2】雑感
中川予想の根拠は,
(1)立方体に内接する多面体では多少なりとも立方体のもつ性質が遺伝する.立方体の3回回転対称軸と合致したとき最大になるというのはごく自然なことである.
(2)立方体の面心図,辺心図,点心図を比較すると,点心図の断面積が大きい.
というものである.
残念ながら(2)は正しくないが,予想自体は本質的に正しいように思えるのは私だけではあるまい.
3次元空間内の2つの中心対称凸体K,K’に関して,凸体の中心を通る任意の平面について,断面積の不等式
A(K)>A(K’)
が成り立つならば,体積についても不等式
V(K)>V(K’)
が成り立つことが知られている(ビューズマンの定理,1953年).
一見単純そうに見えるこの問題では,原点対称という条件を付けなかったり,凸体という条件を付けなかったり,断面を射影に置き換えたりすると偽であることがわかっている.また,5次元以上ではビューズマンの反例が存在することが証明されている(1992年).
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