■n次元平行多面体数(その133)

【1】ルート系の例

 ルートは,半単純リー群の分類とか,特異点,正多面体の決定の際にも現れ,数学のさまざまな領域で重要な働きをします.

 ここで,R^nの標準基底をe1,・・・,enとしましょう.

  ei=(0,・・・,1,0,・・・,0)

たとえば,R^3の標準基底をe1,e2,e3,R^4の標準基底をe1,・・・,e4,R^8の標準基底をe1,・・・,e8とすると,A3型ルート系は,

  Φ={e1−e2,e2−e3,e3−e4}

D4型ルート系は,

  Φ={e1−e2,e2−e3,e3−e4,e3+e4}

E8型ルート系は,

  Φ={e1−e2,・・・,e7−e8,e0−e1−e2−e3}

のようにとれます.

 ここで,それぞれ,

  αi=ei−ei+1

  αi=ei−ei+1,αn=en-1−en

  αi=ei−ei+1,α0=−e1−e2−e3

とおきます.そうすると,E8型ルート系の場合,

  α1−α2−α3−α4−α5−α6−α7

       |          

       α0          

となり,前述のディンキン図形が求まります.このように,ディンキン図形は特異点とルート系の架け橋となっているグラフなのです.

 ルートは鏡映を与えるベクトルとして理解することができるのですが,8次元ユークリッド空間において,8次元単体(4面体の拡張)を鏡映したものからなるモザイク模様に対してベクトルの集合を考えることによって,E8型ルート系が得られるというわけです.多岐にわたる話題の中に少なからぬ重要性をもって現れるわけですから,魅力的な世界を形作っていると申せましょう.

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【2】2次元ルート系の例

 このようにして,平面を鏡映三角形で埋めつくす問題を2つのベクトルα,βの長さと角度によって特徴づけると,R^2のベクトルの集合

  Φ1={α,β,α+β}

  Φ2={α,β,α+β,2α+β}

  Φ3={α,β,α+β,2α+β,3α+β,3α+2β}

を考えることができます.

 2つのベクトルα,βをルート系の基底,また,このようにして得られたベクトルの集合Φ1,Φ2,Φ3を階数2のルート系と呼びます.そのワイル群はそれぞれ3次対称群S3,位数8の2面体群D8,位数12の2面体群D12となっています.

 また,平面を鏡映三角形で埋めつくす問題を一般の次元に拡張して,R^nの単体に置き換えて得られるベクトルの集合が一般の階数のルート系となります.そのとき,n次元単体の基底となるn個のベクトルの集合を

  Φ={α1,α2,・・・,αn}

として,

  〈αi,αj〉=2(αi,αj)/(αj,αj)=Cij

で与えられる整数をカルタン数,n次正方行列C={Cij}をカルタン行列といいます.これはαjを長さ√2のベクトルとするとき,カルタン行列は内積(αi,αj)からなるグラミアンとして定義されることを意味しています.

 カルタン行列では,この4つの場合分けが可能となるのですが,カルタン数はそれほど多くの値をとるわけではないので,その状況を端的に表すグラフ(ディンキン図形)を考えることができます.そして,〈α,β〉〈β,α〉,すなわち,

  θ=π/2・・・・結ばない

  θ=π/3・・・・辺−で結ぶ

  θ=π/4・・・・辺=で結ぶ

  θ=π/6・・・・辺≡で結ぶ

と定めます.

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