■立方体に内接する最大の正多面体(その6)

 このシリーズではこれまで立方体に内接する最大の正多面体

  T in C, O in C, D in C, I in C

を扱ってきましたが,「正多面体に内接する最大の別の多面体は何か」という問題では5種類の正多面体の組み合わせは全部で20通りあります.そのうちの14通りについては解決済みです.

 このシリーズでは,未解決のまま残っている6通り

  C in I,T in I,D in I,

  D in O,D in T,I in D

を除くすべてのケースについても報告したいのですが,今回のコラムでは正多面体に内接する最大の立方体についてまとめてみます.C in Iは未解決ですから,ここで取り上げるのは3つのケース

  C in T, C in O, C in D

に限られます.

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【1】C in T

(Q1)正三角形に正方形を内接させる問題を考えます.正方形の4つの頂点は正三角形の辺上にあり,2つの頂点は正三角形の底辺に,あとの2つの頂点はそれぞれ斜辺の上にあるものとします.

(A1)正三角形の1辺の長さを1とし,正三角形の斜辺上にある正方形の頂点がそれをx:1−xに内分するとき

  x=(1−x)sin60°

より

  x=2√3−3

(Q2)正四面体に立方体を内接させる問題を考えます.正方形の8つの頂点は正四面体の面上にあり,4つの頂点は正四面体の底面に,2つの頂点は斜面に,あとの2つの頂点はそれぞれ斜面の上にあるものとします.

(A2)正四面体の面上に立方体の1面と1辺と2頂点が接する配置ですが,このとき,正四面体に内接する最大の立方体が得られます.その場合の体積比の計算方法ですが,立方体の上面を延長した正三角形の断面を考えると(Q1)と同じ状況が現れます.

 正四面体の1辺の長さを1とし,立方体の上面を延長させた面が正四面体の斜辺をy:1−yに内分するとき

  (2√3−3)y=(1−y)sin60°・sinδ

 ここでδは正四面体の二面角で,cosδ=1/3ですから,

  sinδ=2√2/3

したがって,

  (2√3−3)y=(1−y)(3/2)^1/2

  y=√2/(6−3√3+√2)

 立方体の1辺の長さは

  (2√3−3)y=6/(6+4√3+3√6)=0.295907

ですから,求める体積比は

  {6/(6+4√3+3√6)}^3・12/√2=0.219852

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【2】C in O

 正八面体の頂点からでる4本の辺をk:1−kに内分する4点をとります.その頂点の対蹠頂点からでる4本の辺をk:1−kに内分する4点をとり,この8点を選べば正八面体に内接する最大の立方体が得られます.

  k=(1−k)√2

より,

  k=2−√2

したがって,体積比は

  (2−√2)^3・3/√2=0.426407

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【3】C in D

 正十二面体の8個の頂点を結ぶと,正十二面体の中に立方体ができます.このとき,立方体の1辺は正十二面体の対角線ですから,正十二面体の1辺の長さを1とすると,黄金比φ=(1+√5)/2に等しくなります.したがって,体積比は

  φ^3・4/(15+7√5)=0.552786

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【補】正五角形内にはいる最大の正方形

(1)正五角形の垂線を対角線とする正方形を考えます.正五角形の1辺の長さを1とすると,正方形の1辺は1.08813となりますが,このとき正五角形の頂点と底辺以外にある正方形の2つの頂点は正五角形の枠内からはみ出してしまいます.そこで,正五角形内にはいる最大の正方形を求めてみることにしました.

(2)まず,正方形の1つの頂点を正五角形の頂角にはめ込んで,正方形の2つの頂点を正五角形の辺上におくと,正方形の1辺は1.0673となります.このとき,もうひとつの頂点は正五角形の垂線上で正五角形の底辺に触れていないところにきます.

(3)次の候補として,正五角形の底辺と平行・垂直な辺をもつ正方形を求めると1辺の長さは1.0605となりました.(3)はどちらへも動かしようがないので最大のものと考えたくなるのですが,真の解(正五角形内にはいる最大の正方形)は辺の長さ1.0673の正方形(2)ということになります.

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【補】正n角形内にはいる最大の正(n−1)角形

 同様のことをn=7,9,11,13,・・・についても求めてみます.(2)では正n角形の頂点に連接する辺上に正(n−1)角形の2頂点がくる,(3)では正n角形の頂点に連接する辺上に2頂点,正n角形の底辺に連接する辺上に2頂点あるとして計算式をたてます.

 計算式は複雑になるので省きますが,

  n (1) (2) (3)

  5 1.08813 1.0674 1.0605

  7 1.09532 1.06654 1.08378

  9 1.08515 1.05589 1.0794

  11 1.07463 1.04695 1.07137

  13 1.06578 1.04012 1.06377

  15 1.05857 1.03489 1.05724

  17 1.05268 1.0308 1.05176

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  99 1.00995 1.00512 1.00994

となりました.

 n=5のときは(2)>(3)ですが,n>5では(2)<(3)となって(3)の値はnの増加とともに(1)の値に近づくようです.その意味でn=5は特別な場合になっていることがわかります.

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