■非周期模様(その4)

 京都大学の石原慶一先生より,8月4日の数教協・みちのく大会の講演用として,8,10,12,14角形に相当する4種類の非周期模様を提供していただいた.

 石原先生の解説によると,それらは所定の角度を持った平行線群の双対として描いてあり,数学的に定義されたものを忠実に描いているだけで恣意的なことはしていないという.

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【1】投影法

 この種のタイリングの作成方法には高次元の単純立方格子の断面を用います.

de Bruijnの下記の論文に詳細に述べられてますし,その後多くの解説があります.

http://www.math.brown.edu/~res/M272/pentagrid.pdf

 インターネット上で閲覧できる下記の学位論文の図を使って説明しますと,

http://cs.williams.edu/~bailey/06le.pdf

Fig.2.9にある投影法というのが一つの方法です.

 n次元の立方格子を二次元平面上に投影します.その際に全ての点を投影するのでなく,直交するn-2次元上に投影された点のうちある一つの超立方体の中に投影された点に相当する点のみを投影します.この図では2次元から1次元への投影です.このようにすることで,投影された二次元平面の近傍の点のみが投影されて,その点を結べば図が出来上がります.超立方体で制限をつけていますので,単位平行四辺形が重なり合うことなく繋がります.ただし,この超立方体の中にあるかどうか判断するのは結構大変で,向かい合う面の中にあるかどうか判断しているのですが,判断数がn-2C2通りになります.

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【2】グリッド法

 そこで,より簡便な方法としてFig.4.1で説明されているn-gridという方法を用います.上記の投影断面と基本的には同じですが,超立方格子の2次元断面において,超立方格子を構成する2次元平面の交わりはこのようなn種類の方向を有する等間隔の平行線群で表せます.この角度を正多角形になるように取ります.うまくとるとどの3本の線も1点で交わらないようにとることができます(全平面に渡ってです).

 ここで各平行線で囲まれた最小の多角形に注目して,各辺に垂直になるように線分を描きそれを繰り返すと図が出来上がります.実際の計算ではこのような平行線群を描いているわけではなく,全ての多角形に,基準の多角形からどの方向の平行線をいくつ横切ったかで指数付けします.その指数に基づいて描いています.

 そこで,超立方格子の格子点を通る平面できると,特異点がでますので,微妙にずらしています.そのずらし方で,異なるタイリング図形ができます.うまくずらすと厳密なペンローズ図形となります.

 添付しますのは,上記の方法で作成したタイリングの平行四辺形に模様をつけて正五角形を含む4種類のタイリングに変換し,デフレーションルールを有することを示した図ですが,こういう図も描くことが可能です.

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【3】まとめ

 一般にn次元の立方体を2次元平面に直投影して,非周期模様を作ることを考える.n次元立方格子は互いに平行なn−1次元面の組み合わせになっているが,各ファセットと2次元平面の交わりは,次元公式を使って

  (n−1)+2−n=1

すなわち,1次元の広がりをもつn組の互いに平行な直線となり,直線に囲まれた空間はn次元立方体の2次元平面による断面となる.

 R^nは投影空間R^2とその直交補空間R^n-2(n=3のときはR^2の垂線)に分解される.わかりにく説明で申し訳有りません.ご理解いただければ幸いです.

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