■n次元平行多面体数(その73)

 菱形だけでできている菱形多面体の場合を考えます.菱形のすべての稜は2方向,菱形六面体のすべての稜は3方向,菱形十二面体では4方向,菱形三十面体では6方向を向いているのですが,菱形二十面体では5方向,菱形十二面体(第2種)では4方向を向いています.一般にすべての稜がn方向を向くとき,面数はf=n(n−1)となります.

  f=n(n−1)=2,6,12,20,30,42,56,・・・

  e=2n(n−1)

  v=n(n−1)+2

 これらはn次元立方体を3次元空間に投影したものと考えることができます.菱形30面体は6次元空間における立方体の3次元版,菱形12面体は4次元空間における立方体の3次元版,菱形90面体は合同な菱形だけでできている菱形多面体ではないが,10次元空間における立方体の3次元版に相当するというわけです.

 宮崎興二先生のお話によりますと,菱形90面体は対角線の長さの比が1:τ^2(2.618)の菱形30枚と白銀菱形60枚から構成される美しい形の多面体だそうです.

===================================

【1】黄金2乗菱形

 対角線の長さの比が2:2τ^2の菱形を黄金2乗菱形と呼ぶことにすると,斜辺の長さは(1+τ^4)^1/2ですから,菱形の鈍角をθとすると

  cos(θ/2)=1/(1+τ^4)^1/2

  cosθ=2cos^2(θ/2)−1=−√5/3

となって,これは正二十面体の二面角に一致します.

 一方,対角線の長さの比が2:2τの黄金菱形の斜辺の長さは(1+τ^2)^1/2ですから,菱形の鈍角をθとすると

  cos(θ/2)=1/(1+τ^2)^1/2

  cosθ=2cos^2(θ/2)−1=−√5/5

となって,これは正十二面体の二面角に一致します.

===================================

【2】白銀2乗菱形

 対角線の長さの比が2:2√2の白銀菱形の斜辺の長さは√3ですから,菱形の鈍角をθとすると

  cos(θ/2)=1/√3

  cosθ=2cos^2(θ/2)−1=−1/3

となって,これは正八面体の二面角に一致します.

 それでは対角線の長さの比が2:4の白銀2乗菱形の場合はどうなるのでしょうか? 斜辺の長さは√5ですから,菱形の鈍角をθとすると

  cos(θ/2)=1/√5  (正十二面体の二面角の補角)

  cosθ=2cos^2(θ/2)−1=−3/5

となって,これに対応する正多面体はありません.

 しかし,この角度は黄金菱形の鋭角φの2倍になっています.

  cos(φ/2)=τ/(1+τ^2)^1/2

  cosφ=2cos^2(φ/2)−1=1/√5

  cos2φ=2cos^2(φ)−1=−3/5=cosθ

===================================

【3】菱形90面体の計量

 菱形90面体は白銀菱形5枚からなるサクラの花を作り,それを正12面体の各面に貼り合わせます.そして,正12面体の各辺を黄金2乗菱形で覆った形をしています.そこで,

  サクラの花の中心をA(0,0,h)

  白銀菱形の頂点をB(1/τ,0,h/2)

  正12面体の正5角形面の頂点を

   C(τ/2,τ/2tanπ/5,0)

   D(τ/2,−τ/2tanπ/5,0)

とパラメトライズします.

 ピタゴラスの定理より,

  h=√5−2

これより,

  白銀菱形−白銀菱形間二面角は164.477°

  白銀菱形−黄金2乗菱形間二面角は157.761°

になることが計算されます.

===================================